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頸動脈ステント(2008年7月16日掲載)

小村泰雄・浦添総合病院

血管押し広げ狭窄治療

大脳に血液を送る血管の一つに頸動脈という首の血管があります。人間ドックでも頸動脈を超音波で見る検査(頸動脈エコー検査)を勧められ「頸動脈に油がついている」とか「首の血管が細くなっている」などの説明を受けられた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 頸動脈に油がついているというのは頸動脈の内膜が正常よりも分厚くなっていることをいいますが、この頸動脈の厚さは手軽に検査できる上にいろいろな疾患と深くかかわっていることが分かっています。

その一つは心臓の病気(心筋梗塞、狭心症)とのかかわりで、実際に狭心症などが発見され早期治療や生活指導にて健康を取り戻す方もいらっしゃいます。また頸動脈の狭窄ですが、大脳への血流が減少し、結果として酸素や栄養素が不足となり、血流の乱れにより血栓(血の塊)ができ、それが脳につまることにより脳梗塞となることもあります。

脳梗塞は軽度の場合もありますが、重大な後遺症を残すこともあり、重症の場合は生命の危機に至ることもあります。現在、症状がなくても高度の狭窄がある場合は、将来的にこの脳梗塞を起こすことが予測され、肥満の解消や糖尿病、高コレステロール血症の治療など積極的にお勧めしております。

そこで、本年四月より保険で認められました頸動脈ステント治療についてご紹介したいと思います。

これは狭い血管を風船と金属の金網のようなもので押し広げる治療のことで、理論的には心臓の風船治療と似ています。しかし脳と心臓が決定的に違うのは、頭の中にほんの小さな油がはがれて飛んでも大きな神経症状を起こすことが多い点です。この油が飛ばないように、血液の流れの下流でフィルターにてキャッチし、回収する仕組みでステント治療を行うことができます。

麻酔は局所麻酔で行い足の付け根の血管から頸動脈にカテーテルでステントを運びます。この頸動脈ステントは有効な治療だと認められておりますが、現在は国内の限られた施設で、トレーニングを受けた術者のみ治療が可能となっており、循環器科―脳外科と密接な連携が取れていることが条件となっております。

また狭窄があれば必ず広げなければいけないというものではなく、全身状態や生活に合わせた治療を選択する必要があり、外科的手術が望ましい患者さんもいらっしゃいます。

健康診断で頸動脈エコー検査を受けられ、結果に疑問を持たれた方や病気を指摘された方は医師へご相談されることをお勧めします。