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40代の心筋梗塞(2008年7月9日掲載)

石川直樹・与那原中央病院

動脈硬化 悪化予防を

皆さん「心筋梗塞」という病気をご存じでしょうか。心臓の血管の壁に脂や血液の塊ができ、急に血管が詰まって血液が流れなくなる、命にかかわる病気です。年齢が進むと増える病気ですが、必ずしもお年寄りの病気というわけではなく、四十歳代の方も心筋梗塞で倒れる方がいます。特に最近増えているように思えます。

実際に、当院で検査・治療を受けた方の年齢層を見てみると、ある特徴がありました。五十代から八十代は、「狭心症」といって、血管が狭くてもまだ詰まっていない状態の人も多くいましたが、四十代だけは「狭心症」の方はおらず、「正常」か「心筋梗塞」のどちらかだったのです。つまり、病気が見つかった時には重症だったということです。

どうしてこのような結果になったのでしょうか。予防はできなかったのでしょうか。予防を考える上で、心筋梗塞という病気の起こり方を知ることが重要です。心筋梗塞は、徐々に血管が狭くなって詰まるわけではなく、少し狭い程度の血管が突然詰まることが多いのです。前もって症状が出ず、通常の検査では予知が困難なのです。患者さん自身は、突然「落とし穴」に落ちたような心境でしょう。

しかし、その背景には、心筋梗塞の原因である動脈硬化があり、それを悪化させる、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満などの要因のどれかが必ず存在しています。つまり心筋梗塞の予知は困難でも、動脈硬化の悪化を抑えれば、予防は可能です。

実は私も四十代で、毎日忙しく過ごして、自分では健康だと思っています。おそらくほとんどの四十代は特に体の不調を感じる症状はないでしょう。実はこれが「落とし穴」です。症状がないから病気はないと思っている方が多いのです。

しかし、いざ検査をすると、血圧が高い、肥満がある、血液の糖やコレステロールが高い。そのような、一見、小さな静かな異常が、動脈硬化を悪化させ、確実に心筋梗塞の下地をつくっているのです。見た目健康でも、未検査だったり、異常値が出ても放置したりということがあるようです。それでは心筋梗塞は防げません。

さあ四十代の皆さん。今から血圧を測り、体重を量り、血液検査を受けましょう。そこから新たな健康管理が始まるのです。