沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2008年掲載分 > 「ペット」って?

「ペット」って?(2008年7月2日掲載)

赤嶺珠・中頭病院

「活動性」でがん見つける

「ペット」って? 言われたら多くの方は犬や猫などのかわいい動物を思い浮かべると思いますが、最近、「PET(ペット)」を知っている方が増えてきました。PETとはがんの診断に用いられる検査の一つでボジトロン・エミッション・トモグラフィー(陽電子放射断層撮影)の頭文字をとったものです。

PETでは、体のエネルギー源であるブドウ糖に似た化合物に放射線を出す放射線同位元素をつけた薬(FDG)を注射し、この薬ががんに集まる性質を利用してがんの診断を行います。がんは活発に増殖していてブドウ糖をたくさん使うので、活発な(悪性)がんほど薬がたくさん集まります。形や大きさではなく「活動性」でがんを見つけるので、「悪性度」の見当がつけられます。細胞や組織を採取して調べる病理組織診断以外ではがんなのか良性腫瘍なのか分からなかったエックス線で写った小さな影を、PETならある程度鑑別することも可能なのです。

PETは、撮影時間も四十分と短く、撮影前に薬を静脈注射する以外は、体への負担もかかりません。このように、患者さんに苦痛を与えずに全身のがんを一度に調べられるのがPETの特徴です。

しかしPETにも限界があります。一センチ以下の小さながんはよく見えないことがあり、がんの種類や場所によってはFDGがあまり集まらないものもあります。こうした薬の性質や限界を理解した上でPETをがん検診に用いれば非常に有用と思われます。

PETによるがん検診は、世界中で日本だけで行われており、がん発見率は従来の検査に比べて高いですが、血液、便の検査やエックス線断層撮影(CT)、内視鏡など、ほかの検査法と組み合わせたPET総合がん検診がより望ましいということになります。

また検診だけではなく、がんになった場合でも有用です。がんの治療を行うにはがんの進行度、つまり(1)がんの大きさ(2)リンパ節転移の有無(3)全身の転移の有無を見極める必要があります。この進行度に応じて、手術、放射線治療、あるいは薬物治療(抗がん剤治療)が選択されるのです。PETはがんを見つけるだけでなく、リンパ節転移や全身の転移を見つけるのに役立っており、がん診療には欠かせない検査になりつつあります。

近年がんの治療は急速に進歩し、ごく早期のうちに見つけて治療をはじめれば、大部分のがんは治る時代になってきました。早期発見は死亡率を下げるばかりでなく、患者の体により負担の少ない治療を選択することができ、その後の人生を有意義なものとしてくれるでしょう。