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眼瞼下垂(2008年6月18日掲載)

照屋剛・豊見城中央病院

抗がん剤で生存率上昇

日本でも食生活の欧米化が誘因とされる大腸がん患者は増加傾向であり、死亡数も年間約四万千人(二〇〇五年)となっています。がん患者の死亡原因のうち大腸がんの割合は、男性が第四位、女性が第一位(同)。一五年には死亡患者数が六万人を超え、肺がんに次ぐ第二位の死因となるとされ、沖縄でも増加傾向です。

大腸がんに対する手術が終了すると担当主治医より大腸がんの進み具合(進行度)を説明されます。がん細胞が大腸近くのリンパ節という個所まで広がった場合は、病期分類がV期となります。このような場合は手術が終了しても次の治療(抗がん剤)が必要になります。

V期(特殊例ではU期)では、手術後に抗がん剤治療を追加することで、追加しない場合に比べ約8%の五年生存率の上昇が認められています。治療法は内服薬や点滴注射があり、期間は基本的には半年間ですが延長する場合もあります。

またがん細胞が大腸以外に広がった場合(肝転移・肺転移・腹膜播種など)も抗がん剤治療を行います。二日間にわたり薬を点滴投与する方法があり、その際は身体の一部(胸やおなかや大腿部)の皮膚の中に専用の器具を埋め込み、入院や通院にて治療を行います。

以上のように抗がん剤を使用することで手術困難と思われた大腸がんや転移した病気の部位に対して手術が行えることがあります。最近の報告では抗がん剤治療を行うことで大腸がんの肝転移の症例に対して外科治療が行え、五年生存率が20から40%まで上昇し以前に比べて改善を認めています。

進行した大腸がんや再発した大腸がんに対して抗がん剤を全く行わない場合の平均生存期間は六―八カ月ですが、近年の抗がん剤治療(FOLFIRI療法やFOLFOX療法など)では平均生存率は約二十カ月まで改善しています。また日本でも昨年より分子標的薬(ベバシズマブ)の使用が可能となり、さらに平均生存率は二十五―二十七カ月までとなってきています。

ただしこのような抗がん剤は複数の薬剤を組み合わせて使用するので、さまざまな副作用も認められます。一般的には吐き気、下痢、皮膚炎、発熱、しびれなどがあり、まれにアレルギーによる血圧低下、出血、消化管穿孔や塞栓症といった重症化する場合もあります。

抗がん剤は万能薬ではありませんので、治療によって生じる利点と欠点をよく理解し、納得のいくまで担当主治医とよく相談することが大切です。

最後に抗がん剤治療を含む医療費については自己負担において限度額があり、高額療養費制度が利用できる場合がありますので医療機関へ問い合わせてみてください。