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子どもの持久力(2008年6月11日掲載)

玉井修・曙クリニック

メンタルな問題が根底に

子どもに体力をつけさせるためには、まず、小学生時代は幅広いさまざまなスポーツを体験させて技術力の基礎を築くこと。そして、ある程度体ができあがった中学生、高校生の時代に持久力と筋力をつけさせる指導方針が良いとされています。

小学校の校医をしている関係で、先日、小学生の持久力について調べる機会がありました。一九九九年から文部科学省が実施している新体力テストの結果を基に小学生の敏しょう性、柔軟性、反射神経、持久力、筋力、跳躍力、調整力などを調査して気になるデータを見つけました。

比較できるデータのある一九六五年以降わずかずつではありますが、確実に小学生の体力は低下しています。中でも気になったのは持久力の低下が顕著なことです。他府県と比較して沖縄県の小学生はその他の項目はそれほど見劣りするものではありませんが、持久力に関してはかなり落ちている印象を受けます。

持久力を本格的につけるのは中学になってからだと言って、看過できない問題が潜在的にあると思われます。実は持久力はまじめさや気力がその成績に大きく反映され、メンタルヘルスに関して落ち着いた小学校で好成績をあげるという事実があります。

その他の体力測定項目は見劣りしないのに、持久力だけが落ちているということは、メンタルヘルスの問題が根底にあるということに他なりません。

琉大教育学部の小橋川久光らの研究によれば、持久力は対人不安と衝動性の問題が大きく影響すると指摘しています。対人不安は「大勢の会話の中に入っていけない」「新しい友達をつくるのが苦手」などを想像してみてください。衝動性は「ちょっとしたことでキレてしまい、今やっていることを放り投げる」という行動を考えてみてください。このようなメンタルな部分での問題を持った子どもが沖縄は多いのかもしれません。

くじけそうになった友だちを励ますような雰囲気、一生懸命やった子どもをみんながたたえる雰囲気、そんなものが持久力のアップには必要なのです。持久力をアップさせるために持久走を強要するだけでは多分ダメでしょう。子どもたちがお互いにいたわりあい、励ましあい、認めあう校風が必要です。

そして何よりも、温かい家庭で親の温かい愛情を体いっぱいに浴びることが子どもたちにとって大切なのです。お父さん、お母さん、何でも良いから、頑張ったわが子をあふれるほどの笑顔で褒めてあげてください。