沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2008年掲載分 > 子どもの発熱

子どもの発熱(2008年3月19日掲載)

仲泊晶盛・さしきクリニック

解熱剤使わず安静第一

冬になり冷え込んでくると風邪がはやり出します。風邪をひくと発熱します。子どもの発熱は親にはとても心配なことですが、実は風邪の治癒には必要なことなのです。風邪の時、体は自ら熱を上げようとするからです。

風邪はウイルスというバイ菌よりずっと小さな病原体が原因です。このウイルスが体内に入り込み、どんどん増殖すると発熱、悪寒などの症状が出現し、風邪をひいた状態となるのです。原因はウイルスですが、ウイルスに対する特効薬はほとんどありません。バイ菌を殺す強力な抗生剤もこのウイルスには無力で、効果はありません(ですからたいていの場合風邪の時に抗生剤を投与する必要はないのです)。

現代医学でも風邪のウイルスに対して効果的、根本的な治療法はありません。風邪で病院を受診して処方されるのは、風邪そのものに対する治療薬ではなく、風邪の症状(咳、鼻水等)に対する薬で、対症療法です。それでは体内に入り込んだウイルスはどのようにして排除され、風邪は治癒していくのでしょうか?

体内に入り込んだウイルスを排除するのは、本人の免疫力(抵抗力)です。人間は長い進化の過程で、現代医学ですら対応困難なウイルスを排除する術を獲得しています。その一つが「発熱する」という方法です。ウイルスは熱に弱いことが知られています(それで冬に流行するのでしょう)。また人の免疫力は発熱した時がより活発になることも分かっています。つまり人間は侵入したウイルスに対し、「発熱する」という手段で、その活動を抑え、逆に免疫系は活発にし、効果的にウイルスを排除しているのです。

発熱した子どもに解熱剤を与え、しばらく熱を下げ楽にしてあげることはできます。しかし、解熱剤の効果が切れるとまた熱は上がります。解熱剤は、風邪を治す薬ではないからです。

しかも、この解熱剤の使用は最近の報告ではあまりお薦めできません。風邪の発熱で解熱剤を使うと、治りが遅くなることが多くの報告で分かってきたからです。子どものためと思い使っている解熱剤が、実は風邪の治りを悪くしているのです。発熱してきつくなることで子どもは安静にし、安静により免疫系が集中的に活発に働き、効率よくウイルスを排除します(子どもはきつくないと絶対安静になどしてくれません)。

発熱し、きつそうな時に解熱剤も使わず、ただ見ているだけというのは親としては忍びないことですが、「使わずに観ることが本当の親の愛である」、と思い堪え忍ぶことが時には必要ではないでしょうか(こんな時は漢方薬がおすすめです)。