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疲労骨折(2008年2月27日掲載)

仲宗根竜也・同仁病院

体の酷使が骨への負担に

皮膚、皮下脂肪、筋肉の厚い柔らかな組織の下には硬い骨があり、それが何らかの原因によって連続性を絶たれることがあります。それが骨折です。骨折にもいろいろな分類がありますが、今回は疲労骨折について話したいと思います。

疲労骨折とは通常は骨折を起こさないような軽度な外力が同じ場所に繰り返し加わることにより生じるものです。金属疲労と似ていますが、生身の体では生体反応としての骨膜反応や仮骨形成といった修復反応(体のおかしいところを治そうとする自己防衛反応)が生じることが金属と骨の異なる点です。

ではなぜ体は一生懸命自己防衛をしているのに骨折するのでしょうか?答えは「使いすぎ」です。修復が追いつかない外力を受け続けているのです。

整形外科外来を受診される若年者で、普段の日常生活には支障はないが運動をすると痛みがあると訴え、その部位が下肢でありハードなトレーニングを反復して行っていたのであればまず疲労骨折を疑います。

しかし本人やコーチ、また保護者ですら骨折があるとは考えていません。この疲労骨折の厄介なところはエックス線では明らかに折れているという所見に乏しいのです。運動を休んでもらい二―三週後にようやく仮骨形成が見え始めることもあるのです。

当然痛み始めた初期にはエックス線に骨折を疑わせる所見はありません。そのことをよく説明し理解してもらっているのですが、中には運動を中止せずいつまでも痛みが続き、思い描くような成績が残せないばかりではなく、最終的にはその競技自体もあきらめざるを得ない状態となるお子さんもいます。

特に周りから期待されている若年者は休むことに対して抵抗感、罪悪感があるのでつい無理をしてしまいます。目先の成績にこだわってしまうと将来の大器をつぶしてしまいかねません。過度なトレーニングを繰り返し行い、体を酷使するということで骨への負担が増えるということを保護者、指導者は十分に理解し予防や休める環境を整えてあげることが大事です。

疲労骨折は下肢に多いのですが、部位としては(1)尺骨:剣道(2)肋骨:ゴルフ、野球のスイング(3)腰椎:スポーツ全般(4)恥骨、大腿骨:長距離選手(5)脛骨:スポーツ全般、最も多い(6)腓骨:スポーツ全般(ウサギ跳びで生じる)などがあります。スポーツ時の頻回な痛みがあるようなら、一度整形外科専門医の診察をお勧めします。