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ぜんそく治療薬(2008年2月13日掲載)

松本強・豊見城中央病院

基本は吸入ステロイド

気管支ぜんそくは、気道(空気の肺への通り道)の慢性炎症(一種のやけどの状態)によって気管支が細く(狭窄)なり、咳や痰、ゼーゼー、息ぎれを来すありふれた病気です。発作は夜間から早朝に多くなるのが特徴です。

夜、床についてから、または夜半に症状が出現し、あるいは早朝に苦しくなって寝られません(睡眠障害)。息苦しいだけでなく、睡眠障害は作業能力を低下させ、外来受診、救急室受診、休職や休学、入院治療を余儀なくされ、日常生活にさまざまな支障を来します(QOL=生活の質の低下)。経済的にも無駄な出費(医療費)がかさむことになります(入院治療は、外来治療の約十倍)。

現在では、適切な治療を行えば多くの患者さんのぜんそく症状を抑えることができます(コントロール可能)。

ぜんそく薬は、抗炎症薬(ぜんそくの本態である炎症を抑えます)と気管支拡張薬(細くなった気管支を広げます)に分類できます。治療の第一選択は基本的に吸入ステロイドです。飲み薬(経口薬)ではありません。

特徴は吸入療法(気管支に薬を吸入する)であることです。この薬剤なしに現在のぜんそく治療は成り立ちません。逆に本剤を使用していないぜんそく治療は誤りともいえます。

現在、日本では四種類の吸入ステロイドがあり、薬理作用だけでなく、吸入器具におのおの特徴があります(ディスカス、タービュヘイラー、定量噴霧式など)。

第二の選択は最近本邦にも登場した吸入配合剤です。吸入ステロイドだけでコントロールできないぜんそくには本剤が適応です。吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬が一つの容器に配合された吸入薬です(合剤)。

これまで別々に使用せざるを得なかった両薬剤が一つになったことで簡便性(治療継続率の向上)のみでなく相乗効果が生まれ、ぜんそくコントロール、QOLの改善、副作用の軽減、ぜんそく死亡率の軽減にも寄与することなどが報告されています。ぜんそく患者の約八割は本剤にて改善するとされています。

ぜんそく治療の目標は「健常人と変わらない日常生活」です。どんなに良い薬も継続せねば意味がありません。週一回以上の症状がある、月一回以上日常生活や睡眠の妨げ、あるいは月二回以上の夜間症状がある場合は継続治療が必要です。発作がないからといって決して吸入ステロイドを中止しないことが大事です。