沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2008年掲載分 > メタボリックドミノ

メタボリックドミノ(2008年2月6日掲載)

砂川博司・すながわ内科クリニック

早期対策で「なだれ」防止

「あなたメタボね」と肥満の代名詞のように使用されている「メタボリック症候群」。その進行過程には深刻なものがあります。

Aさん。五十四歳で脳梗塞を発症し左半身まひ。職場復帰に向けてリハビリ中です。三十四歳時(七四キロ、十八歳六四キロ)に「肥満」を指摘されましたが、仕事が忙しく、お付き合いの酒、たばこもやめられませんでした。四十二歳時(八〇キロ)「高中性脂肪」、四十四歳時「高血圧」をそれぞれ指摘されますが、これといった症状がないため放置。その後さらに「高コレステロール」「高尿酸血症」を指摘されたため、心配になりジョギングを始めたものの中断。

異変に気づいたのは五十二歳の時でした。左半身に力が入らず、しびれがあります。言葉も出てきません。一過性脳虚血発作(脳梗塞の前触れ)と診断され投薬治療が開始されました。そして五十四歳のある朝、前回と同じ症状が出てしまいます。残念なことに今回はまひが残ってしまいました。

Bさん。五十七歳で心筋梗塞を発症。朝方激しい胸痛があり、息もできません。救急車で運ばれ、一命を取り留めました。三十七歳時(七八キロ、十八歳六六キロ)「肥満」、四十歳時(八〇キロ)「高血圧」、四十五歳時(八二キロ)「高中性脂肪」「低HDL血症」を次々に指摘されますが、「運動と食事療法で頑張る」と投薬治療を拒否。五十歳時に「高血糖(糖尿病)」「心電図異常」を指摘され、健診のたびに投薬治療を勧められますが「運動と食事療法で…」とやんわり拒否。そのうちにあの朝を迎えることになったのです。

二人の共通点は、肥満によって「高中性脂肪」「低HDL血症」「高血圧」「高血糖」を次々に合併したことです。また、どちらも定期的に健診を受けていたのですが、積極的な生活改善や通院・治療につなげることができませんでした。その結果、長い年月をかけて命にかかわる病気が次々につくられていったのです。これがいわゆる「メタボリック症候群」です。

「メタボリック症候群」は「肥満」が引き金になりドミノ倒しのように次々と新たな病気を発症していきます。そしてその終末が「脳梗塞」「心筋梗塞」なのです。「脳梗塞」や「心筋梗塞」は偶然発症する病気ではありません。二人の例からも分かるように病気の芽は三十、四十代の早い時期に現れています。できる限り早期にドミノのなだれをくいとめる必要があったのです。

さて、あなたは今メタボリックドミノのどの位置にいるでしょうか? 健診を受けて自分の状態を確認しましょう。自ら行動し、メタボリックドミノの進行を阻止するのです。あなたの健康を守るのは、あなた自身なのですから。