がんといってもいろいろな種類があります。胃がん、大腸がん、乳がん、肺がん…。
医学的には、上皮性の悪性腫瘍のことです。
人は誰でも、自分のことを知る権利があります。生き方を決める権利があります。患者本人が、自分の病気を知りたいと思えば、家族が何を言おうとも医師は本人に病気のことを話す義務があります。
最近は、がんなどの悪性腫瘍となったとき、「本人に本当のことを詳しく話して下さい」と考える家族が増えてきましたが、まだ話してほしくないと考える家族もいます。
私は、本人が検査に来られ、がんなどの悪性腫瘍と診断されたとき、精神的なショックも考え、原則的に「次回、検査結果の説明をしますので説明を聞いてもらいたいご家族も一緒に来院してください」と話すようにしています。できるだけ家族と一緒の時に、「がんです」と説明し、治療方法を話し、病気を受け入れられるようにします。
しかし、検査結果がでる前に家族が、「本当の病名を本人には説明しないでください」と主治医にお願いする場合があります。特に患者が高齢の場合に多いです。
家族は、本当のことを話すとショックを受けて、投げやりになるのではないか、自殺を考えないか、高齢で老い先短いので悪いことは聞かさないでほしいなど、不安になってしまうのです。そのため、患者自身の気持ちを十分考えないまま「話さないでください」と頼んでしまうのです。
主治医も、本当の病名を話すことが患者のためになると分かってはいても、家族が反対することを話すのは抵抗があります。また、家族を説得するのはとても時間がかかるため、家族の反対を理由に、本人に詳しくは説明せず、治療を進めることがあるのです。
果たして、それは本当に患者本人のためになるのでしょうか。もちろん、精神疾患を患っていたり、認知症などのため話を理解できない、また、本人が説明を聞くのを拒否するなど話さない方が良い場合もあります。しかしそれは例外的なことだと思います。
現在、本当の病名を患者に話していない家族がいたら、もう一度、主治医とよく相談してください。家族のためではなく、がんになった患者本人のために、よく話し合ってください。もし、自分ががんになったとき、どうしてほしいか、がんになった患者の身になって考えてみてください。すると、本当のことを話そうという勇気がわいてくると思います。家族が気持ちを一つにして、病気と向き合い闘ってください。家族の絆もさらに強くなり、必ず話してよかったと思えるようになると思います。