沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2008年掲載分 > 脳動脈瘤

脳動脈瘤(2008年1月16日掲載)

新垣辰也・中部徳洲会病院

破裂・未破裂で異なる治療

最近はインターネットの普及や報道などで、「脳動脈瘤」についてはかなりの方が、理解してきているように思います。脳動脈瘤は破裂するといわゆるくも膜下出血をおこす「爆弾」のようなものです。実際の医療の現場では、「破裂脳動脈瘤」と「未破裂脳動脈瘤」に大きく分けられます。

一、破裂脳動脈瘤

くも膜下出血をおこしてしまった脳動脈瘤です。一度破裂すると、最初の二週間で約三割の再破裂の危険性があるので、理由がない限り(手術の危険性が高い、高齢者である、重篤な基礎疾患がある)は、通常、急性期(三日以内)に手術を必要とします。手術方法は、開頭して行うクリッピング術が一般的で確実な方法ですが、近年はより侵襲の少ない血管内治療が行われるようになり、前述の理由のある患者様にも手術可能な場合もあります。

二、未破裂脳動脈瘤

近年、MRIが簡単にとれるようになったこと、脳ドックが盛んに行われるようになったことから、破ける前の動脈瘤が見つかるようになっています。見つかった場合にどうしたらいいのか? いろいろな意見はありますが、現在は、大きさが五ミリ以上の場合、破裂の危険性が高くなるので七十歳以下であれば、手術をしたほうがいいという見解が一般的です。

例えば、五十歳で六ミリの動脈瘤が見つかった場合は、年間破裂率が1―2%と言われているので、九十歳まで生きるとすれば、四十年間での破裂の危険性は30―60%の数字になります。

手術にはどうしても危険性が伴います。通常は危険性5%以下で手術は可能です。ただし、動脈瘤の場所、形などで破裂の危険性、手術の危険性は大きく異なります。場所によってはほぼ確実に後遺症が出る手術もあるため、手術ができない場合もあります。主治医の意見をしっかり聞いて、手術を受けるかどうか、受けるならどのような方法を選択するかどうか判断したほうがいいと思います。もちろん、未破裂動脈瘤は極端に大きくなければ(15ミリ以上)通常は症状は全くありません。もちろん、手術をしないという選択肢も全く間違いではありません。しかし、手術を受けないにしても、毎年、MRIなどで検査を行い、大きさ、形が変化していないかどうか経過を見たほうがいいでしょう。

動脈瘤はなぜできるのか? 現在のところ、はっきりと因果関係がわかっているのは遺伝的な要素と、喫煙です。特に女性は遺伝しやすいといわれています。血のつながった家族にくも膜下出血の人がいるようでしたら、一度脳ドックを受けてみたほうがいいかもしれませんね。