「のどに何かが引っ掛かった感じがする」「のどがヒリヒリする」「たんがからんで取れない」「のどがすっきりしない」などの症状を訴えて耳鼻咽喉科外来を受診することがあります。
このようなのどに対するさまざまな異常感の原因として、口蓋へんとう、舌へんとうの肥大や口腔内の慢性炎症、咽頭がん、喉頭がんなどの器質的原因で起こることもありますが、異常感の原因が見いだせないこともあり、心因性の要素も含まれることがあります。また、のどの症状ではありますが、まれに狭心症や不整脈など心臓病の部分症状であったり、ぜんそくなどの場合もあり、内科的病気のこともあり注意が必要です。
さらに、最近はこの異常感を訴える患者さんの中に、胃食道逆流症(逆流性食道炎)や咽喉頭酸逆流症という病気が人口の高齢化や食生活の欧米化に伴い、わが国でも増加傾向にあります。過剰に分泌された胃酸が食道へ逆流したり、咽頭や喉頭にあがって粘膜が障害されることで、このようなのどの異常感が生じることが注目されるようになってきました。
実際に当院の耳鼻咽喉科を受診された二〇〇六年―〇七年の約一年間で、のどの異常感があり、精査した患者さんのうち、がんや明らかな慢性炎症を除いた患者さんの約30%が、逆流性食道炎あるいは咽喉頭酸逆流症でした。逆流性食道炎の定型的症状は胸焼け、胸のしゃく熱感などですが、のどの引っ掛かり感、しゃがれ声、のどのヒリヒリ感といった非定型的耳鼻咽喉科症状が主になるものを咽喉頭酸逆流症と言います。
診断として、耳鼻咽喉科では、まず、喉頭内視鏡検査で、がんや炎症など器質的疾患がないかどうかを調べます。明らかな器質的疾患がない場合で、咽喉頭酸逆流症が疑われる場合には、「Fスケール問診表」を用います。これは、逆流性食道炎の患者さんの症状の多い項目を十二項目選んで作られており、簡単な問いに答えるだけで、酸逆流症の可能性をある程度予測することができます。
食道炎が実際にあるかどうかは内科で、食道胃内視鏡検査を受ける必要があります。また、胃酸を強力に抑える薬を約二週間程度内服していただいて症状がとれるかどうかをみる検査もあります。症状が改善されれば、食道胃逆流症、咽喉頭酸逆流症の可能性が高いと言えます。
なかなかのどの引っ掛かり感が取れない、のどがヒリヒリする、すっきりしないなどの症状が続いている人は一度、近くの耳鼻咽喉科、あるいは主治医の先生と相談されてみてはいかがでしょうか。