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頸椎症性脊髄症(2007年12月5日掲載)

大城義竹・那覇市立病院

症状で保存・手術的治療を

頸椎症性脊髄症という病気を耳にしたことはあるでしょうか? 手足がしびれる、はしが使いにくい、衣服のボタンがかけにくい、など手指が思ったように動かせなくなったり、小走りができない、酒に酔ったみたいにふらふら歩いている、ロボットみたいにぎこちなく歩いている、などの歩行障害がこの病気の特徴的な症状です。

頸椎は、骨格の中心となる椎骨、クッションの役割をする椎間板、骨を安定させる役割をする靭帯で構築されますが、年齢を重ねると次第に退行していきます。手足の動き、感覚を支配する神経は、脳、脊髄につながっています。

頸椎には脊柱管とよばれる、脊髄の通り道があります。椎骨が変形し骨の出っ張り(骨棘)ができたり、椎間板の弾力がなくなり膨隆したり、靭帯が肥厚、または緩んだりすることで、脊柱管が狭くなったり、頸椎に細かいずれが生じたりします。

このような変化で脊髄は圧迫され、脳からの手足の動きへの指令、または手足などの感覚が脳に伝わりにくくなります。五十歳以上の方に多く、明らかな誘引がなく症状が出現することが大部分です。診察でこの病気が疑われたなら、磁気共鳴診断装置(MRI)の検査を行い診断をすることができます。

治療には保存的治療と手術的治療があります。軽いしびれや日常生活に支障がない場合は経過を見ることが多く、消炎鎮痛薬やビタミン剤、安定剤などの薬物の治療や、頸椎のけん引、装具など固定で症状が軽減することもあります。症状の程度にもよりますが、保存的治療の約半数は症状が進行するとの報告もあります。神経まひが進行する場合は、手術的治療も考慮しなくてはなりません。手術は、頸椎の後ろの骨を削り、脊柱管を広げる方法が主流で、二週間程度の入院が必要です。

最近は全国的に高齢化社会が進んでおり、以前より自立した生活を求められることが多いことや、周りに介護ができる環境ができていないことで、積極的治療を行うことが多くなっているようです。手術の安全性や技術は以前より向上していることもあり、患者さんと術後の合併症と含めて、よく相談しながら治療法を決めています。

他にも頸椎椎間板ヘルニアや頸椎後縦靭帯骨化症などの病気があり、頸椎症性脊髄症とほとんど同じような症状を呈します。手足のぎこちなさ、力が入りにくいなどの症状がある場合は、専門医の受診をお勧めします。