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かくれ糖尿病(2007年11月21日掲載)

川満克紀・南部徳洲会病院

詳しく検査し減量で予防

先ごろ厚生労働省から発表されたデータによると、沖縄県は年齢調整死亡率において糖尿病関連死が男女とも全国一位(二〇〇五年)でした(二〇〇〇年は男女とも二位)。日本人の5・7%が糖尿病ですが、県民は8・4%が糖尿病です。

肥満の割合も沖縄県は二位を大きく引き離して一位です。内臓脂肪が増えると肥大した脂肪細胞から、インスリンの働きを良くし、動脈硬化を防ぐ善玉のアディポネクチンが出なくなります。反対にインスリンの働きを妨げて血糖値を上昇させ糖尿病になりやすくする悪玉のアディポサイトカインがたくさん出てきます。

全国で七百四十万人の糖尿病患者さんがいますが、治療を受けているのは半分以下の三百万人に過ぎません。特に沖縄県では治療を受けていない患者さんの割合が多いと言われています。

沖縄の若い年齢層の心血管死亡が多く、特に三十歳代から四十歳代の男性の心筋梗塞患者が増えています。昨日も四十四歳の男性が急性心筋梗塞で救急搬送されてきました。糖尿病で治療中でしたが血糖値が二六〇、ヘモグロビンA1cが10・6%(正常は5・8%未満)とコントロールが悪い状態でした。

糖尿病は、心筋梗塞などの動脈硬化を引き起こす原因の一つです。そして健康寿命を十五年短縮させることが最近の研究で分かりました。糖尿病があると、高血圧、脂質異常症(高脂血症)を合併しやすく動脈硬化が相乗的に進みます(メタボリック症候群)。

狭心症、心筋梗塞患者さんの約30%は糖尿病ですが、残りの患者さんを詳しく調べてみると20%が糖尿病であり、30%が耐糖能障害(糖尿病ではないが正常でもない境界型)を持っていることが分かりました。糖尿病があると心筋梗塞を発症しても治療が難しく、予後も悪くなります。

糖尿病は自覚症状がないことが多く、血液検査をしなければ診断できない病気です。

ところが多くの場合、血液検査は空腹時に行いますが、空腹時の血糖は正常(一一〇未満)でも食後には二〇〇以上となるいわゆる隠れ糖尿病が多数います。

当院の調査でも糖尿病でない患者さんを(高血圧、狭心症などで通院中、ヘモグロビンA1cが5・5%以上)調べてみると40%が糖尿病で44%が境界型でした。

人間ドック、健康診断で空腹時の血糖が正常でも安心できません。肥満、特に腹部肥満、高血圧、脂質異常症、運動不足があれば、一度糖尿病の詳しい検査を受けてください。また3%程度の体重減少で60%以上の糖尿病発症リスク低下があります。減量で糖尿病を防ぎましょう。