沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2007年掲載分 > 腎不全の治療法

腎不全の治療法(2007年11月14日掲載)

上地正人・浦添総合病院

生活習慣に合わせ選択

今回は腎臓の病気、特に腎不全の治療法について話します。腎臓の働きには「尿をつくる」以外に「尿に体内の毒素を溶かし排出する」「貧血やカルシウム不足にならないよう監視する」などがあります。この働きが損なわれた場合を腎不全といいます。適切な治療を行わないと亡くなってしまいます。その治療とは「透析」と「移植」。「生きるため」に行う治療です。

印象深い患者さんの話を一つ。仕事も順調、結婚後に娘にも恵まれ、サラリーマン生活を送っていた。四十代前半に倦怠感を自覚するようになった。手足にむくみもでてきた。最初は仕事がきついせいだと考えていた。妻に促され医院を受診したとき腎不全と告げられた。その時担当医からは、透析の話、とりわけ「血液透析」と「腹膜透析」の話を聞くことになった。

いろいろなことを考えた。血液透析を選択すると一回約四時間余り治療時間が必要、週三回病院に通院ということになると、職を失うのではないか。そして家族を支えるため腹膜透析を選択した。腹膜透析は自分で透析液をおなかの中に注入したり、取り出したり多少の操作は必要であったが、自分のペースで透析が行えて、通院も二週に一回または月一回で十分であった。

その後仕事も順調、おおむね一般的な家庭と同じ生活ができた。しかし娘が小学生になり、家族でプールや海に行きたいとせがむようになった。腹膜透析は透析液をおなかに注入するためにカテーテルという管をへその横に挿入するのだが、プールや海となると他人の目も気になる。男性は考えた末に血液透析を始めた。職場に迷惑をかけぬよう週三回夜間透析ができるところへ通院した。その後娘は成長し、父より友達を求めた。男性は、「また仕事を頑張るぞ」と再度腹膜透析のカテーテルを挿入したという。

人にはさまざまな生活背景があり、大切にしたいものがある。生きるために行う透析治療法は時期によって、背景によっていずれかを選べるのです。そしてもう一つの選択肢が「移植」。移植患者は透析を継続している方々に比べ生活の質と寿命(十数年後の生存率)が格段に違います。また沖縄県を含め近年の移植成績は素晴らしく、腎臓を与える側ともらう側、ABOの血液型が異なった移植でもその生着率はかなり高いものとなってきました。

最後に情報提供です。沖縄県腎臓病患者協議会と同仁病院の宮里朝矩医師の協力を得て十八日午後二時から浦添総合病院で腎臓病の患者と家族向けに腎不全治療の講演会を開催します。興味のある方はどうぞお立ち寄りください。