沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2007年掲載分 > COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)(2007年10月31日掲載)

玉城仁・県立中部病院

禁煙こそ最大の予防と治療

COPD(シーオーピーディー)という病名を最近、耳にしたことはありますか。COPDとは息をするときに空気の通り道となる「気道」に障害が起こって、ゆっくりと呼吸機能が低下していく疾患です。細い気管支と肺胞の壁が壊されて吸った空気をうまくはき出せなくなくなる「肺気腫型」と、咳、痰が長い間続く「慢性気管支炎型」を総称してCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼んでいます。

その約90%は喫煙が原因です。受動喫煙でも発症する可能性があります。二〇〇一年の厚労省の報告では診断されたCOPD患者数は三十四万人でしたが、十八都道府県で行われた住民調査では、実は診断されていない患者が多く本邦には約五百三十万人の患者がいると推定されました。

世界保健機関(WHO)の報告では一九九〇年に世界の死亡原因の第六位であった本疾患は二〇二〇年には虚血性心疾患、脳血管障害についで「第三位」になるとされています。

日本でも二〇〇五年の厚労省の統計によると年間一万四千四百十六人がCOPDにより死亡し、死亡原因の第十位、男性に限ると第七位にランクされています。先進国の中で比較的喫煙率の高い日本では今後も増え続けていくでしょう。また、酸素吸入を行い在宅で生活する患者が〇五年には十三万人を超え、その48%がCOPDでした。そのことからも生活の質を著しく低下させる疾患であることがわかります。

喫煙開始後、三十―四十年後に階段や坂道を上がると息苦しくなり診断されることが多い疾患です。喫煙者で咳、痰、呼吸困難が少しでもあればCOPDの可能性があります。

診断法は簡単で、上記症状に加えて呼吸機能検査で一秒率(強制的に一秒間でどの程度吸った空気をはき出せるか)が有意に低下していれば診断となります。重症になると気道感染症、呼吸困難の悪化で入退院を繰り返し、常に呼吸困難感を伴うようになります。軽症のうちに発見すれば治療成績もよいので、喫煙者で上記症状がある方は呼吸機能検査を早めに受けてみましょう。

しかし、現代医学にも限界があります。COPDは部分的には治療が可能ですが、ほとんどは不可逆性の病態です。禁煙こそが最大の予防策そして治療です。高血圧、高脂血症、糖尿病を恐れている喫煙者のみなさん、それと同様に怖いのが喫煙です。発がんだけではなく、六十―七十歳代にCOPDという息苦しい余生が待っているかもしれません。禁煙が難しい方は気軽に禁煙外来を受診してみるとよいでしょう。さあ、あなたも禁煙をして愛煙家?(哀煙家!)を卒業してみては!