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麻疹(はしか)(2007年10月10日掲載)

遠藤和郎・県立中部病院

医療者もワクチン接種を

県では一九九九年と二〇〇一年に大きな麻疹の流行を経験し、九人の乳幼児が犠牲となりました。この悲劇を繰り返さないために、県の小児科医が中心となり、「はしか“0”プロジェクト」が動きだしました。これにより一歳児のワクチン接種率が上昇し、近年沖縄では麻疹の流行は見られなくなりました。

しかし今年前半、本州では麻疹の大流行が発生しました。今回の流行では、大学生などの青年が多く罹患し、複数の大学が臨時休校に追い込まれました。この影響を受けて、沖縄では「輸入感染症」的に麻疹が本州から流入しています。二〇〇七年一月から八月に県内で診断された十二人中七人は沖縄県以外で感染していました。さらに驚くべきことは、二十歳以上の青年が七人も含まれていたことです。すなわち沖縄においても本州と同様に、麻疹ワクチンを受けていない青年が数多くいると考えられます。

ところで麻疹感染者を診察する医師は、麻疹にはかからないのでしょうか? 医師が麻疹に罹患すると、どのような問題が発生するでしょうか? 成人の麻疹は重症化することが多く、入院を要することがしばしばあります。また医療者特有の問題として、麻疹と気づかずに勤務を続けた医師から患者さんに、麻疹をうつしてしまう危険があります。さらに複数の医療者が同時に感染し職場を離れると、病院機能が低下し、適切な医療が提供できなくなります。

このような事態を防ぐ唯一の方法は、医療者への麻疹ワクチン接種です。麻疹ワクチンは極めて優秀なワクチンで、成人の場合は一ないし二回接種で十分な免疫を得ることができます。

では、ワクチンはいつ接種すべきでしょうか。私は医療のプロを目指す学生時代(医学部、看護学校や看護学部、保健学科、薬学部、短大、専門学校など)に接種すべきと考えます。その主な理由は以下の四点です。(1)医療者としての自覚を植えつける(2)患者さんから学生への感染防止(3)学生から患者さんへの感染防止(4)就職時、安全に勤務が開始できる。

沖縄には医学部、看護大学を始め多くの医療者養成機関があります。若き医療者が感染の被害にあわないように、さらに患者さんに安全な療養環境を提供するために、これらの教育機関が一致団結して、学生時代にワクチン接種を勧める必要があります。