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骨と関節の日 (2007年10月3日掲載)

武内正典・武内整形外科

筋トレで丈夫な運動器を

日本整形外科学会は一九九四年度に十月八日を「骨と関節の日」と定めました。これは整形外科に対する正しい認識を広め、骨と関節の健康について考えてもらおうという趣旨のもとに設けられたものです。以来各都道府県の整形外科医会などを中心に、毎年活発な諸行事が行われるようになりました。

整形外科は診療領域が広く、専門性が高いため、骨粗しょう症、関節外科学やスポーツ医学など毎年異なるテーマを定め、県整形外科医会会員の先生方に新聞紙上対談で分かりやすく解説していただいております。

今年のテーマは「運動器不安定症」です。皆さんには耳慣れない言葉かと思いますが、骨、筋肉、関節、神経、手足など、運動や日常の生活を営むために必要な部分を運動器と呼び、それらがうまく使えない状態の総称が「運動器不安定症」です。

では運動器不安定症とならないためにはどうすればよいのでしょうか。それは健康で頑丈な運動器を作ることだと思います。そのために最も良い運動は「筋力トレーニング(筋トレ)」だと私は確信しています。

以前より「貯筋のススメ」を訴えておりますが、筋トレを主体とした治療効果の一部を紹介します。

H・Sさん=七十五歳男性。家族や友人の勧めでウオーキングをしていたが徐々に膝関節が痛くなり、歩けなくなって受診。診断は変形性膝関節症。直ちにウオーキングを禁止し、痛みをとることに専念。痛みが取れると同時に筋トレ開始。三カ月後大腿部が二センチ太くなり、歩行時の痛みを訴えなくなった。初診以来五年間筋トレを継続し、注射も打たず一錠の薬も服用しないが、世界各地を旅行し、登山も楽しんでいる。体重は変わらないが大腿部は初診時より五センチ大きくなった。

M・Tさん=六十五歳女性。肩関節の動きが悪く、大好きなゴルフに支障をきたし受診。診断は肩関節周囲炎および関節拘縮。理学療法士による運動器リハビリ後、肩甲骨周囲筋の動きを良くする運動とともに全身の筋トレを行った結果、ゴルフコンペで二カ月連続優勝。飛距離が二クラブ違ったと喜んでいる。

そのほか、歩けなくなってやめた老人クラブに戻って走って見せた七十八歳女性、筋トレでスタイルが良くなり若返りの薬を飲んだとうわさになった六十五歳男性や十数年ぶりに「正座」ができた七十四歳女性など筋トレにより運動器不安定症を克服した例はいくらでもあります。

筋トレの効果は自らの身体で経験しなければ決して分かりません。どこかの宣伝ではありませんが「JUST DO IT(今すぐやろう)!」です。(県整形外科医会会長)