沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2007年掲載分 > ほんとに五十肩?

ほんとに五十肩?(2007年9月19日掲載)

福嶺紀明・豊見城中央病院

他の病気も視野に検査を

一言目に「五十肩ですかね〜?」と診察室に入るなり質問してくる患者さんが多く見られます。特に中年の患者さんのほとんどは、「夜中痛くて眠れない」「痛みで目が覚める」「肩が上がらない」「手が後ろに回せない」などの訴えで、症状がとても強くなってから受診することが多いようです。表情をみると、疲れ果てて、明らかに睡眠不足といった人がほとんどです。

二言目には「五十肩は治りますかね〜?」と腕をさすりながら聞いてきます。患者さんの方が「五十肩」と決めつけてくることが多いようです。

ここで「五十肩」について少し説明したいと思います。「五十肩」は、江戸時代から使われている俗語で「ぎっくり腰」「肩凝り」などと同じような言葉です。医学的には「いわゆる五十肩」「凍結肩」「肩関節周囲炎」などと呼ばれ、「中高年に生じる肩関節痛と可動域制限をきたし、他の肩の病気ではないもの(原因不明)」と定義されています。

この病気は四十―六十歳代に発症し、女性にやや多いようです。症状の経過は三つの時期に分けられます。最初に「肩を動かした時の痛み」「安静時の痛み」「夜中の痛み」「肩が上がらない」などの症状が始まる時期。次に、痛みは徐々に軽くなるが「肩の動きの悪さ」が残る時期、最後に、肩の動きは改善し、痛みも気にならなくなる時期がきます。ほとんどの場合が、半年から二年くらいで自然治癒することが多いようです。

確かに中高年の肩の痛みで困っている人は、ほとんど「五十肩」かもしれません。肩はひざや腰と違って体重のかからない場所であるため、少々痛くてもなんとか仕事や日常生活が可能です。そのため、病院を受診しても、薬(鎮痛剤や湿布)・注射・リハビリなどが長期間行われていることがほとんどです。

しかし、なかなか痛みが改善しない場合は他の病気を考える必要があります。代表的な疾患として(1)肩腱板断裂(2)石灰沈着性腱板炎(3)首からくる神経痛(4)関節リウマチなどが挙げられ、これらも慢性的な頑固な肩の痛みを来します。その他にも、「五十肩」になりやすい内科の病気として主に「糖尿病」「甲状腺疾患」などが挙げられます。

痛みが強くて、仕事や日常生活に支障を来している場合や治療の効果がない場合は、X線、MRIや内科的な検査などを行い、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。長く苦しんだ肩の痛みから解放されて、快適な生活に早く戻れるかもしれません。