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脳梗塞の予防(2007年8月22日掲載)

下地武義・県立南部医療センター・こども医療センター

血圧管理し危険因子減らす

初めに、最近の新薬でt―PAが日本でも使用できるようになり、すべての脳梗塞の病態の治療薬であるがごとく報道されているが、大きな誤解であることを述べておきたい。この注射薬は、主に心臓にあった塞栓(血の塊)が飛んで行って脳の血管に詰まってしまう病態(心原性脳塞栓)にのみ有効である。しかも発症後三時間以内に治療が開始されなければならない。それ以後に使用すると重大な副作用を起こす可能性が高くなるからである。

脳梗塞の代表は、小さな小さな血管が閉じてできるラクナ梗塞と比較的大きな血管が閉じてできるアテローム血栓性脳梗塞と呼ばれる二病態である。その他に一過性脳虚血発作があるが、これは磁気共鳴診断装置(MRI)などの検査にも異常所見を呈さないことが多い。しかし、原因は脳梗塞と同じであり、将来脳梗塞になる可能性が30%強と高いのでしっかりと検索しなければならない。これらの病態で脳梗塞が起きると、できた場所により脳の機能が侵されることになり、その後の人生に大変な苦労を背負い込むことは明白である。

脳梗塞にならないようにするための一次予防で一番大切なことは血圧の管理である。最近は収縮期(最大)が一四〇、拡張期(最小)が九〇以下と厳しくなっている。次に喫煙、高脂血症、糖尿病、心房細動、深酒および脱水(特に沖縄では)などが危険因子になっているので、これらをコントロールすることが重要であるのは自明の理である。

起こってからの二次予防も上記の危険因子の除去にさらに努めることが何より重要である。血圧の管理はさらに厳しくなり、収縮期は一三〇以下となる。次に医師に処方された薬、多くの場合は抗血小板剤であるが、これをきちっと服用することである。アスピリン、チクロピジンや最近出た副作用の少ないクロピドグレルなどである。服用後に薬の副作用として肝機能障害や造血抑制などがあり、これらはよく知られている。

しかし、これらの薬による血小板機能の過剰抑制という副作用にも注意を払わねばならない。皮下出血や止まらない鼻血などで気が付く。服用を続けながらの抜歯や内視鏡検査など検査を受けると思わぬ過剰な出血に出合うこともある。手術時には服用を止める薬の一つでもある。逆に、薬を止めてしまい、梗塞を起こしたという例もままあり、まさにもろ刃の剣ではある。

このような副作用をできる限り減らすようにするため、これらの薬の投与後は、血小板凝集能を測定し、至適な抑制を得るように調整すべきである。