沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2007年掲載分 > 過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(2007年8月8日掲載)

玉城政弘・たまきクリニック

生活工夫、ストレス除いて

排便の回数や量は個人差が大きいため正常な排便を定義することは難しく、腸の働きは、人によって大きく異なります。

ほとんどの人は朝食後三十分から六十分ほどで腸の働きが強くなる傾向にあります。

排便回数は一日三回から三日に一回まで正常とされています。排便の回数、便の硬さや量に変化がある場合や、血液、粘液、膿、過剰な脂肪分が便に混じっている場合は、排便障害が起きていることを意味します。

排便障害の中でも消化器外来で最も多く遭遇する疾患は、便通異常とそれに伴う腹部不快感や腹痛を訴える機能的排便障害の過敏性腸症候群です。過敏性腸症候群の症状で悩む人は若い人から高齢の人まで幅広くいます。

この排便症状は、便秘を主体とする便秘型、下痢を主体とする下痢型、典型的な便秘と下痢を繰り返す交代性便通異常型に分けられます。障害が起こる原因はストレス、食事の変化、その他わずかな刺激が消化管の異常な収縮を起こし腹痛や腹部膨満感がみられ、排便や排ガスで症状が楽になるのが過敏性腸症候群の腹部症状の特徴です。胃と腸の機能は脳と自律神経にコントロールされていますので、ストレス、抑うつ、不安などの精神的変化は過敏性腸症候群の症状を悪化させます。

症状は食事がきっかけになり、食後数分で突然強い便意を催し、排便後症状は改善されます。就寝中に起こることはまれです。痛みは持続する鈍痛あるいはけいれん痛の発作として表れ、下腹部に起こります。

診断で一番大切なのは慢性の疾患、つまりクローン病、潰瘍性大腸炎、あるいは大腸がんなどの器質性疾患を除外することです。医師は、便検査、大腸のエックス線検査、大腸内視鏡検査を行い異常が無いことを証明する必要があります。治療の第一歩は原因が分からないで起こるので、何よりも患者さんが当面困っている症状を和らげることから治療を始めます。

生活面での工夫、心理療法による心理、社会的ストレスや精神的な不安を取り除くことが大切です。問題を起こす特定の食品が突き止められたら、その原因を避けるようにします。例えば乳糖不耐症の方は乳製品を避けます。最近は消化管運動改善薬の新薬が開発され優れた効果が期待できます。精神的な原因が確定された場合は抗うつ剤、精神安定剤を併用することもあります。気になる方は気軽に消化器専門医に診てもらうことをお勧めします。