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糖尿病と腎不全 (2007年8月1日掲載)

勝連英雄・かつれん内科クリニック

高血糖が合併症起こす

糖尿病は血液の中の糖分が多くなる病気ですが、特殊な例外を除くと高血糖だけでは生命に影響はありません。しかし高血糖はゆっくりと確実に合併症を起こしていきます。

D・Mさんの話をします。四十歳ごろのある時期、のどが渇き、水分が欲しくなり、おしっこがたくさん出て、体がだるく、体重も減りました。変だなとは思いましたが、気にしないようにしていたら、いつの間にか元気になってきました。五十歳ごろ、おしっこをすると泡が立ち、なかなか消えないことに気付きました。五十歳代後半には足がむくんだ感じで、少し速く歩くと息が切れ、視力も落ちてきています。

さすがのD・Mさんも、自分の体に何かが起こっていると感じ、奥さんに引きずられる形で近くの診療所を受診し、血液と尿検査の結果、総合病院を紹介され、透析が近いこと、狭心症の疑いがあること、眼科のレーザー治療が必要と言われ目の前が真っ暗になりました。

一年後。D・Mさんは透析室のベッドの上で、胸に残る半年前の心臓のバイパス手術の傷跡をさすりながら考えます。仕事も一生懸命やったし、いい夫、いい父親だったのに、何で自分だけが…。そうです。糖尿病の合併症は善い人、悪い人の区別をつけません。目だけとか、腎臓だけとか、心臓だけとかの区別もつけません。血糖が高い状態が二十年もあればできあがるのです。

D・Mさんは実在しません。D・Mとは糖尿病(Diabetes Mellitus)の略です。でも、周りをご覧になって見てください。たくさんのD・Mさんがいるのではないですか?

最近では、進行した糖尿病による腎不全でも、低タンパク食や、腎臓を守る作用のある降圧剤や利尿剤、毒素を腸で吸着する活性炭、貧血の改善などさまざまな治療を総合的に行うことで、透析までの期間を長くすることができてきています。

わが国の血液透析などの腎代替療法は世界で最も発達しており、安全で比較的快適な生活が可能です。しかし、糖尿病発症のできるだけ早い時期から、一│二カ月の血糖値の平均であるヘモグロビンA1cを6%前半に、夜間・早朝なども含めた血圧を一三〇/八〇前後にすれば合併症は起こりません。

また尿の特殊検査(微量アルブミン)を測定することで、わずかな腎障害も分かりますし、血糖管理で消失させることができます。

D・Mさんの場合を教訓にして合併症を起こさないようにしていきましょう。