病院によって救急外来、救急センター、救命救急センターといろいろな呼び名があります。どのような違いがあるのでしょうか?
厚生省は一九七七年に救急医療体制を整備し救命救急センターを発足させました。
まず救命救急センターでは重症の救急患者を診て三次救急と呼ぼう。軽症の患者さんは診療所や小さな病院でお願いして一次救急と呼ぼう。入院が必要な患者さんは入院設備の整った外科系の病院、内科系の病院にお願いして二次救急と呼ぼう。このようにして、一次、二次、三次救急といった、受け入れる医療機関側から見た日本独自の救急医療体制が始まりました。
この形が今でも存続し、問題点も指摘されています。
まず実際に救急の現場では重症度や疾患に応じた振り分けがスムーズにはいきません。病院の選定に時間を要し搬送時間の長い地域が存在します。また重症の患者さんだけが三次救急の救命救急センターに搬送されるわけでもありません。地域によっては二次救急病院にも運ばれ、その病院がうまく機能しなければ診断、治療が遅れたりする場合があります。
日本の医療水準は高く世界と肩を並べるほどになった、そして専門性の追求が高度の医療であるという、考えが医学界にはあります。
しかし専門性を追求する医学教育の中で、全身を広く診るという本来の医療の原点を教育していなかったように思います。救急医療が医療の原点であるにもかかわらず、救急医療が二の次にされてきたというのは、医療の原点がおろそかにされてきたということです。
北部地区医師会病院に新しく救急部ができました。われわれ救急専従医は専門の科にとらわれずさまざまな救急患者に対応します。しかし各科への振り分けを専門にしているわけでもなく、専門性に劣る低レベルの診療を行っているわけでもありません。軽症から重症まですべて対応し、必要に応じて各専門の先生に相談し入院をお願いしています。各科での対応が困難な症例や重症な全身管理を要する場合は担当医として入院加療を行います。
また全身を診られる医師を育てるために、救急の現場で研修医の教育・指導を行っています。救急医療を実践するためには、病院で働くスタッフの協力が不可欠です。各専門の科の医師が救急医療を理解しその地域で救急に携わってきた土壌が大切です。
敷居を低くし、地域のニーズに応え、救急医療の質を高め、高度の医療を提供し、リハビリ、在宅医療など福祉の分野までの包括的な医療で地域に貢献していきたいと思います。