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水虫の正体(2007年7月11日掲載)

富永智・南部徳洲会病院皮膚科

原因はカビ、かゆみなしも

皮膚病の水虫は、どうして水虫という名前が付いたのでしょう。きっと水疱やジュクジュクした皮膚の状態から付けられたのではないかと思います。また、かゆいので、虫が付いているような気分になったのかもしれません。それで、水+虫→水虫、という名前が出来上がったのではないかと想像します。

虫が付いているわけではない、ということはすぐ分かってもらえると思います。ついているのはカビです。そして、水っぽい発疹、というのも、私の経験では当たっていないように思えます。乾いた水虫が多いのです。患者さんの水虫では、水疱を見ることは少なく、ただ、皮がむけているだけのことが多いです。部位も、足の指の間より、足の裏(かかとを含む)に見ることの方が多いです。

水疱や皮膚の赤み、そしてかゆみは、水虫菌(白癬菌)が直接起こしているわけではなく、水虫菌に反応するリンパ球や好中球などが集まってきて、その結果起きる現象です。ですから、もしリンパ球などがあまり反応しなければ、菌がいても目立つ皮疹が起きないのです。足の裏で、かゆみがなく、ただ皮が少しむけているだけの水虫がそうなのだろうと思います。しかし、菌はいるわけです。かゆみがないから大丈夫、というわけにはいきません。

第一に、感染します。家族にうつします。水虫の人のお風呂上がりの足ふきマットには菌がつきます。

第二に、白癬菌は爪に入っていきます。だいたい爪先から入っていきますので、爪先が白く濁っていたら要注意。足の裏の皮がむけていないか、ご覧ください。どうして爪に白癬菌が入るのかというと、この菌はケラチンを食べて生きています。人の体でケラチンがあるところは、皮膚の角層、爪、毛です。爪や毛のケラチンは硬くて厚いですから、軟こうがしみ込みにくく、内服を必要とする場合が多いです。内服も最近はパルスといって、多めの量の薬を短期間飲む方法もありますが、この場合は飲み合わせが良くない内科薬がからんできて、飲めないケースもあります。

第三に、足に水虫を持っていると、体に飛んできます。特におしりに飛びやすいです。体にできればタムシという言い方もありますが、タムシも水虫も同じです。同じ軟こうを塗ることになります。

このように、かゆくなくても、足の裏に水虫を持っていると、いろいろ問題が出てきますから、足の裏の皮がむけていたら、かゆくなくても、皮膚科医に調べさせることをお勧めします。