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子どもの心臓病(下) (2007年7月4日掲載)

長田信洋・県立南部医療センター・こども医療センター

専門治療整う沖縄の病院

昨年、日赤医療センター(東京都渋谷区)で生後十四日目の千百三グラムの未熟児大血管転位症の手術成功例が報告され、世界最軽量とのこともあり大きな話題となりました。

この例に代表されるように、いま小児心臓外科の世界では、手術の低年齢化、低体重化が急速に進んでいます。心臓を止める開心術の場合、初めに人工心肺という機械を心臓につなぎ、全身へ血流を送りながら手術を行います。体重二〜三キロの新生児の場合、心臓の大きさは大人の親指ほどしかありませんので、微量に血液循環を調整しなければ小さな心臓は破裂してしまいます。

そのため人工心肺を操作する技士は、より専門的な技術と経験を持ち合わせていなければなりません。また麻酔においても手術の内容をよく把握した小児麻酔の専門医が必要ですし、手術が終わった後、不安定な時期を看護する看護師にも高度の専門性が要求されます。

県立南部医療センター・こども医療センターでは開設と同時に全国でもまだ数少ない小児の集中治療部(PICU)を立ち上げ、より専門的な術後管理を行う看護力を強化してきました。この一年間に行った小児心臓外科手術は百四十四例(人工心肺使用例百六例)ですが、その52%は、一歳未満の赤ちゃんたちです。

このように沖縄でも手術の低年齢化が進んでいますが、手術時期のタイミングを逃さず専門スタッフが治療を行うことで97〜98%の子どもたちが助かるようになりました。

手術の低年齢化が進む一方で、全国の子ども病院が直面している現在の課題は、成人期を迎えた先天性心臓病の方たちの継続治療の事です。女性の方は妊娠出産の問題が出てきますし、男性も女性も年齢が高くなるにつれ、大人特有の病気が出てきます。小児専門のドクターたちでは対応できないし、かといって非常に特殊な領域である先天性心臓病にも対応できる大人の病院を探すのも至難の業です。

国内初の子ども病院としてスタートした国立小児病院は二〇〇二年、成人期の治療もできる国立成育医療センターに生まれ変わりました。老年期は今のところその対象から外れますが、子ども病院の今後のモデルケースとして注目されています。

沖縄で昨年四月にオープンした南部医療センター・こども医療センターは、赤ちゃんから成人、さらに百歳を超えるお年寄りまで専門治療が受けられる病院としてスタートしました。そのための最新機器と専門スタッフが配置されています。

手前みそになるかもしれませんが、全国の子ども病院から見ればこれほど理想的な病院はありません。沖縄の心臓病の子どもたちにとっては、この課題はもう解決済みといえるでしょう。