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子どもの心臓病(上)(2007年6月27日掲載)

長田信洋 県立南部医療センター・こども医療センター

新生児100人に1人に異常

統計学的な調べにより、赤ちゃんの百人に一人は心臓に何らかの異常をもって生まれてくることが分かっています。その原因は一部の染色体異常を除き、まだはっきりと分かっていません。先天性心臓病の種類は三十種以上あり、それぞれが組み合わさった複雑な例まで個別に数えると、その診断名は百種類ほどに上ります。

病気を見つけ、診断名を明らかにするための主な検査法として心臓カテーテル法があります。それはカテーテルという細い管を大腿部の血管から挿入して心臓の中まで進め、心臓の内部の血圧を測ったり、造影剤を用いて形を明らかにするものです。この方法は非常に多くの情報が得られますが、心臓や腎臓への負担が大きく、特に新生児などでは検査後に状態が悪化する例があるので慎重に行わなければなりません。

近年は心臓に負担をかけない超音波診断法や、MRI、CTスキャンなどの検査法が発達してきました。最新鋭の64列MDCTという機器を用いますと、心臓の鮮明な立体画像をコンピューターで描き出すことができます。

心臓外科医は手術を行う前に、病気の心臓を三百六十度回転させてどの位置からでも見ることができるため、複雑な手術を行う場合でも、頭の中でその内容をはっきりとイメージして手術に臨むことができるようになりました。それは正確な手術を行うのに大きく役立っています。

生後間もない赤ちゃんの心臓は大人の親指ほどの大きさしかありませんので、修復部の切開や縫合が一_違っただけでも心臓に大きな問題が生じてしまいます。これらの診断機器は手術の出来不出来まではっきりと描き出しますので、外科医の腕もすべて客観的に評価されます。

近年注目されている検査法のひとつに胎児心エコーがあります。妊娠十六週ごろになると、お母さんのおなかの上から超音波をあてて、胎児の心臓の形や動きを観察することができます。本来二つあるべき心室が一つしかない場合や血液が逆流しているような異常は、比較的よく見つけることができます。

そのため生まれてからすぐに状態が悪化するような重症例は、産科医だけでなく、心臓病の専門医が待機した上で分娩を行い、すぐに適切な処置を施します。中には生まれたその日に手術を行う例もあります。お母さんも心の準備をしてから出産に臨みますので、状態が悪くなってから心臓病に気づき、慌てて検査と治療を始めていたころに比べると大きな進歩といえます。