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生活習慣病(2007年6月20日掲載)

山城竹信・勝山病院・老人内科

「己の心」と闘い長寿に

長寿天国であったはずの沖縄県は、男性において全国二十六位に落ちてしまった。肥満、高血圧、糖尿病などを含むメタボリック症候群のためである。これは心の油断によるものでしょう。

歴史を振り返ると、数え七十四歳で亡くなった「孔子」は努力と信念にみちて「四十歳にして惑わず」と述べたと思える。つまりバランスの取れた食事、睡眠、運動を基本にして精神を鍛えることを同時に心掛けることを命で悟って、仕事にまい進し信念という堅固な心を持って生きてゆくことを示したのであろう。

生きてゆくことの正しき信念の根底には、命には限りがあり、日々を悔いなく生きてゆくことの積み重ねであると心身で悟りきることが必要と思える。その悟り(生命に対する畏怖の念)が長寿を勝ち取ることや寝たきりの状態にならないためのポイントでしょう。その悟りを心にすえ、他人との比較ではなく、自分自身の使命に生き切り、なお他人を共に生かしきっていく行いによって、より良く生きることができるのでしょう。

現実の問題として、糖尿病を患った高血圧の患者さんがおられるとします。糖尿病の薬を処方してもらいながら降圧剤で血圧を安定させます。そして本人自身は闘病生活にて生命力を強くするように心掛けねばなりません。

まず、生活のなかでは塩分の少ない食事を心掛けることが血圧コントロールには大切です。次に、過食による糖分は組織であまると血管の中を高血糖の状態で流れています。つまり糖質、脂質の取りすぎは、膵臓や肝臓を疲れさせた状態にします。四十〜五十歳代になると肉体のパワーは落ちてゆきます。そこで食事を若いときのように「欲するがままに」取り続けて、不規則な生活をしていると過食状態になり本人は睡眠をとって休んでいるつもりでも、膵臓は昼夜インシュリンを分泌し血糖を下げるために働きっぱなしの状態になり糖尿病は悪化し、また脳卒中や心筋梗塞なども併発しやすくなります。要は、年齢に応じて肉体と精神を同時に鍛えることが大切ということになります。

この根本が「心こそ大切なり」と言われるがように、自分自身の心を革命し、「萎えている場合ではない」と一念発起し日々努力していくことが、孔子が述べた「四十歳にして惑わず」の心境を身読することになるのでしょう。

新聞紙上に発表されたメタボリック症候群を示す那覇市の住民健診のデータという知識を見つめ、心豊かで健康な生き方を維持するために人間の持つ生命の傾向性(三毒という煩悩の一つ、貪り)を自らコントロールする知恵を発揮すべき時代に来ていると思われます。つまり生活習慣病との闘いに勝つには、与えられた文明のなかで「己の心」との闘いであると考えます。