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便秘のおはなし (2007年5月30日掲載)

洲鎌理知子・おもろまちメディカルセンター

原因により治療さまざま

大腸内視鏡検査の時に、患者さんから「宿便はありますか?」と、ご質問を受けることがあります。想像するに「宿便」とは、さながら腸の内側の壁(粘膜)に長年にわたって張り付き、堆積したヘドロのようなものでしょうか。

週刊誌などではよく目にするその「宿便」という文字ですが、実は、医学用語には「宿便」という言葉は存在しません。そして実際にいくら内視鏡で探しても、腸の中にそのようなヘドロ状の便を見つけることはできないのです。

便秘を正しく理解して解消できれば、「宿便」と言われているものの存在で悩まなくて済むかもしれません。今回は、便秘の原因について紹介します。

便秘は一般に「便量と排便の回数が減少した状態」とされているようですが、このような排便障害を原因で分けると、主に器質的な異常と機能的な異常の二つがあります。

腸管を柔らかなパイプとして想像してみて下さい。このパイプの内外に便の通過を妨げるものがある場合を器質的異常と考えます。例えば、腸管の中に大腸ポリープや大腸がんなど腫瘍性のものがあって通過を邪魔する場合、炎症後に腸管が細くなっている場合などがあります。

他臓器の腫瘍などで腸管を外から圧迫している場合もあります。そのほかには、腸重積や軸捻転、開腹手術後の腸管の癒着、腹部の放射線治療などが原因となって通過障害が起こることがあります。

一方、機能的な異常もさまざまな原因で出現しますが、ここでは単純性・けいれん性(緊張性)・弛緩性に分けて説明します。

単純性の場合は生活習慣や精神的要因で起こるとされ、主に便意を意識的に我慢して、それを繰り返すうちに排便の反射が抑制されてしまう状態です。例えば、朝食を抜いたり、外出先での排便をちゅうちょしたり、頻回にかん腸を繰り返す場合に起こってきます。けいれん性便秘は腸の緊張が強いために起こりますが、これには副交感神経が関与します。神経の過度の緊張は腸管の収縮を促進して便の通過が悪くなり、硬い便で腹痛を伴うことがあります。

弛緩性便秘は、腸管扇動の低下が起こる場合で高齢者に多くみられます。全身性疾患に伴ったり、抗精神薬などの薬剤が原因となって起こる場合もあります。床に就くことが多く運動量が少ない場合、糖尿病・パーキンソン氏病などが原因の場合も少なくありません。

便秘の原因によって、治療法もさまざまです。特に器質的便秘の場合は、内視鏡などの検査を受けた上での治療をお勧めします。