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医療のIT化(2007年5月23日掲載)

松嶋顕介・まつしまクリニック

今は熟練と開発の過渡期

○○さん、診察室にどうぞ。呼ばれて診察室に入ると白衣を着た先生がこちらを向いて診察を始めてくれる。脈を調べ、胸、おなかと診察が進みゆっくり患者さんの話を聞いてくれる。昔からよくある診察室における医者と患者さんとの状況であるが、昨今はちょっと事情が違うらしい。

受付で携帯を渡され、ほどなくその携帯で入る部屋を指名され、部屋に入るとパソコンの画面を見ている医者を見つける。一言二言、症状を聞きパソコンの画面になにやら打ち込んでいる。そのうち検査なり診断なりを言い渡されて、お大事にと部屋から出て行くように指示される。その間に一度も顔を見なければ体に触ることもない。こんな経験をした医者や受けた患者さんが増えている。

医療におけるパソコンの導入は医療を行う側からはデータの蓄積、整理、情報管理および伝達スピードのアップなど今後発展性のある道具であるが、それを日常の診察の中でうまく使いこなせていないのが現実である。

この前の中部地区医師会での医療におけるIT化に関する講習会でIT化に向けた医療に取り組んでいる医療機関は10%もなかった。さらには保険請求においても二〇一一年度にはレセプトオンライン化される方向にある。診察を受ける患者さんも何時間も待たされて、その結果が上記のような対応では文句のひとつも言いたくなるだろう。

医療現場のIT活用でのメリット、デメリットは次のようなものだ。

【メリット】

【デメリット】

IT化は必要であり、推進されるべきだと思うが、使い手の医療従事者の熟練と診察への影響の少ない(入力など)機器の開発が必要であり、対象となる患者さんもまだ過渡期で医療関係者も不慣れなために迷惑を掛けていることを理解していただきたい。