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下血(2007年5月16日掲載)

大嶺靖・沖縄赤十字病院

黒色便なら早めに受診を

肛門から血液が出る状態を下血といいます。口から肛門までを一本の管と考えて下さい。管のどこから出血しても下血を呈する可能性があります。

血液が腸管内に長い時間止まっていると化学変化で黒色便になります。食道や胃、十二指腸からの出血は黒色便になります。肛門に比較的近いところからの出血は鮮血便になります。下血を来す疾患を幾つか挙げてみます。

(1)痔 内痔核は痛みがなく排便後に真っ赤な出血がみられます。外痔核(いぼ痔)は通常出血はなく強い痛みがあります。裂肛(きれ痔)は硬い便で肛門が切れるもので痛みも伴います。下血を訴え外来を受診する患者さんのなかで最も頻度が高い疾患です。痔からの出血は緊急性が低く、慌てる必要はありません。

(2)大腸がん ほとんどは少量ずつの出血のため気付かないで経過します。貧血を指摘され、その精査で大腸がんが発見されることもまれではありません。排便時に自覚できない出血を潜血といいますが、便の潜血検査は大腸がん検診として有用な検査です。肛門近くにできた大腸がんは痔に似た下血がみられます。

(3)大腸憩室出血 大腸の壁が部分的に薄くなり、内圧で外側へ袋状に飛び出した状態を大腸憩室症といいます。袋状の部分に便が詰まると、時に炎症や出血を起こします。出血は通常憩室炎に伴って起こるため腹痛もみられます。大腸憩室があるだけでは治療の対象になりません。

(4)炎症性腸疾患 クローン病は腹痛や下痢を来すことが多く、下血はあまりみられません。潰瘍性大腸炎は下痢と粘血便を繰り返すことが特徴的です。両疾患とも若年者に多く、食事療法や薬物治療を必要とします。

(5)虚血性腸炎 突然発症し、腹痛、下血を来します。高齢者に多く、動脈硬化などにより腸の血流が悪くなって起こる疾患です。

(6)胃・十二指腸潰瘍 黒色便として自覚されます。

(7)その他 出血性胃炎、感染性腸炎、胃腫瘍、小腸腫瘍、大腸ポリープ、血管腫など。

黒色便か鮮血便かはたまた暗赤色便かなど下血の性状と腹痛やその他の症状で疾患を推測し、検査を行います。黒色便の場合は比較的大量の出血と考えられ、緊急性があると判断します。痔からの出血と思われても、重篤な疾患が隠れている場合もありますから、受診をお勧めします。

まずは消化器内科で診てもらうのがいいと思います。黒色便は鉄剤(貧血の薬)の内服でもみられることがありますので、下血と勘違いしないよう自分の便をいつも見ておくのも大事です。