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ペインクリニック(2007年4月18日掲載)

加治佐淳一・おもろまちメディカルセンター麻酔科

局所麻酔薬で痛みを遮断

「ペインクリニック?」。この言葉を耳にしたほとんどの方がけげんな顔をなさいます。日本に誕生して四十年と歴史も浅く、カタカナで表されるこの診療科は一体どんなところなのでしょうか。

「ペイン」とは「痛み」を意味しますから、「ペインクリニック」を一言でいうと「痛みの診療科」となります。痛みそのものの治療を第一に行うのが特徴です。

「痛み」は体の異常を知らせる警報の役目を果たしています。痛みという警報がなければ病気に気づくのが遅れ病状は進んでしまいます。盲腸の時のおなかの痛み、骨折した時の痛みなど、私たちの身に突然起こる痛みの多くがこれにあたります。この場合内科や整形外科など各科で原因を治療することによって痛みもよくなります。ペインクリニックの出番はほとんどありません。

ところが、長寿、ストレス社会といわれる現代では「警報の役目を果たしていない(果たさなくなった)痛み」も増えているのです。しかもやっかいなことにこういった痛みは、各科での痛み止めやリハビリだけでは治りにくいことも多く慢性化しやすいのです。痛みを抱えながら暮らしていくのは大変なことです。仕事に支障を来し、夜も眠れず、精神的にもうつ状態になってしまいます。このような「不要な痛み」を緩和し、痛みによって低下した生活の質を少しでも改善することがペインクリニックの仕事なのです。

代表的な病気としては、帯状疱疹による痛み、頭痛(片頭痛など)、顔面痛(三叉神経痛など)、頸肩腕痛(頸椎症、頸椎ヘルニア、五十肩など)、胸背部痛(肋間神経痛など)、腰下肢痛(腰椎ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎圧迫骨折など)、がんの痛みなどが挙げられます。

これらの痛みを緩和するにあたってペインクリニックでは主に「神経ブロック」という方法を用います。痛みを伝える神経や、自律神経の近くに局所麻酔薬を注射することによって、痛みを遮断(ブロック)したり血の巡りをよくしたりする治療です。一時的に痛みを和らげるだけでなく、麻酔薬が効いている間「痛みの悪循環」を断ち、傷んだ神経を修復し徐々に痛みを治していきます。神経への注射と聞くとどうしても怖いイメージをもたれるかもしれませんが、正しい知識をもって行えば非常に安全な方法です。

痛みのつらさは本人にしか分かりません。すべての痛みが必ずとれるとはいいませんが、痛みでお困りの方は一度ペインクリニックへいらして下さい。