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糖尿病網膜症(2007年3月28日掲載)

今泉綾子・那覇市立病院 眼科

自覚症状なく重症化の恐れ

目がかすむとのことで、四十歳半ばすぎの方が眼科を初診されました。診察するとかなり進行した糖尿病網膜症でした。聞いてみると十数年前に健診で高血糖を指摘されたそうですが、そのまま放置していたとのことです。

早速レーザー治療、その後眼科に入院し硝子体手術をと予定しました。ところが全身検査をしてみると心臓、腎臓など他の合併症が見つかり、血糖コントロールも悪く、このままでは生命の危険があるためすぐに内科の入院となりました。

眼科的治療としてまずレーザー治療を施しましたが視力は徐々に落ちてきて、全身状態が落ち着き手術可能となったころには網膜症はより進行しておりました。もっと早くに来ていれば、と思いながら時間のかかる手術を行いました。術後順調で網膜症は安定したものの網膜の変性は高度で視力は0・1以下でした。糖尿病網膜症の方にこのパターンが多いです。

厚生労働省調査によると一九四六〜九六年の五十年間で糖尿病を患っている方は約三十倍にも膨れ上がっており、日本人の八人に一人が糖尿病の危険にあるとのことです。すなわち合併症である網膜症も増えているというわけです。

これまでは網膜症が失明原因の一位でしたが、眼科技術の進歩によりその割合は減ってきています。しかしながら自動車の運転や読書をしたりという生活の中で不自由を感じたり、働き盛りにあっという間に視力が落ちてしまい、仕事に支障を来している方の割合は逆に増加傾向にあります。

網膜症の検査には瞳孔を開く薬を点眼して眼底検査を行います。異常が疑われる時には蛍光眼底撮影といって造影剤を注射して網膜の血管の状態を調べます。網膜症の重症度は、正常な時期→単純網膜症→増殖前網膜症→増殖網膜症と進んでいきます。最後の増殖期になるまで視力に影響が無い場合も多く、増殖期になって突然見えなくなるということも多々あります。

そのように網膜症は自覚症状が現れにくいために眼科を受診するのが遅れ、自覚症状があって眼科を受診した時にはすでに網膜症は重症化していることがあります。糖尿病と診断された方の30%は眼科を受診していない、眼科を受診しても視力に変化がないために半数以上の方がその後の受診を止めているのが現状です。

血糖が高いと言われたけれど体調や視力は良いからと、放置したままにしていてはいけません。眼科検診を中断されていませんか? 自分の体は自分で管理するしかないのですから。