沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2007年掲載分 > 閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症(2007年1月24日掲載)

佐久田斉・豊見城中央病院

寒い時、足の痛みに注意を

温暖な気候の沖縄でも冬になると増えてくる病気があります。寒くなると血管が収縮し、もともと狭くなっている部分で極端に血液の流れが悪くなります。おなかから足にかけての動脈でこのような状態がおこると足の動脈硬化、つまり「閉塞性動脈硬化症」という病気になります。

この病気は、足が冷たい、しびれるなどの軽い症状から始まって、歩行時にふくらはぎや太ももが痛くなります(間欠性跛行)。次第に歩ける距離が短くなり、進行すると休んでいても痛い(安静時)、傷が治らない(潰疼痛 )、腐る(壊疽)などの症状が現れます。瘍

最近、閉塞性動脈硬化症のために病院を訪れる重症の患者さんが増加しています。動脈硬化を進行させる糖尿病が増えたことにもよりますが、今はやりの「メタボリック症候群」や「ドロドロ血」の状態で、まだ治療を受けていない人が増えていることも原因になっています。喫煙、肥満、ストレス、運動不足なども動脈硬化を悪化させる原因であり、閉塞性動脈硬化症の他にも心臓病や脳卒中の危険因子でもあります。

閉塞性動脈硬化症は、症状が軽い場合には運動療法や内服薬でかなり良くなります。症状が強い場合には血管専門医による積極的な治療が必要です。最近ではバイパス手術の技術や成績が格段に進歩し、また風船カテーテルを用いて狭くなった動脈を広げる血管内治療など、切らずに治す方法も積極的に導入されています。

しかし、診断と治療が遅れてしまうとふくらはぎや太ももでの下肢切断という悲惨な状況に陥ります。高齢者の場合、「もうトシだから、バイパス手術はいらないだろう」と安易に切断してしまうと、そのまま寝たきり生活になってボケてしまうことがよく見られます。

この病気の予防には、動脈硬化を悪化させる要因を避け(特に禁煙が大切)、糖尿病、高血圧、高脂血症などがあればきちんと管理すること、積極的に歩くことが重要です。

自分の足で自由に歩けることは、とても素晴らしいことです。老後の生活を豊かにするためにも、この病気を見落とさないようにする必要があります。この病気が疑われたら、まずかかりつけの先生に相談して全身の診察を受けることをお勧めします。