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増える前立腺がん(2007年1月10日掲載)

呉屋真人・那覇市立病院

50歳以上はPSA検査を

前立腺はぼうこうのすぐ下で、直腸の前方に位置する男性の生殖系臓器で、精液の一部を産生します。前立腺がんは主に外腺という部分にできる悪性腫瘍です。

欧米人に多い前立腺がんですが、最近われわれ日本人にも増えてきています。増加率でみると全悪性腫瘍の中でトップで、将来的には肺がんに次いで二番目に多いがんになると予想されています。

前立腺がん増加の要因として、一番目には食生活の欧米化が挙げられます。脂肪分の多い食事を取ることが前立腺がん発生に影響を与えると考えられています。

二番目に高齢者人口の増加です。国立がんセンターがまとめた前立腺がんの統計によると、前立腺がんにかかる人数は全年齢では、人口十万人あたり十人程度ですが、五十歳以降は急激にその頻度は増加し、七十歳台では約百人、八十歳以上では二百人を超えるほどになります。つまり前立腺がんは高齢者のがんといえます。

国のがん統計では、沖縄県は前立腺がんの多い地域とはされていませんが、本県が日本の中で最もアメリカ化された地域であることや、日本屈指の長寿県であることを考えると、今後確実に前立腺がんは増えてくるものと思われます。

前立腺がんは基本的に無症状なことが多いため、これまでは約半数例がすでに転移をした状態で発見されていましたが、現在はわずかな量の血液で早期のがんを発見できるようになりました。

この検査は血液中の前立腺特異抗原(PSA)値を測定するものです。PSAは前立腺組織より分泌される蛋白で、体外に出た精液が固まらないようにする働きを持っています。正常の人でも体内で作っている物質ですが、前立腺にがんができると血中にこの数値が上がってきます。4・1以上では、がんが疑われ、専門医による診察が必要です。

前立腺がんが増えている現状から、五十歳以上の方は年一回のPSA値測定をお勧めします。また症状だけからでは前立腺肥大症とがんを区別することができませんので、排尿症状のある方も血液検査を受けることをお勧めします。

この検査は泌尿器科以外でも簡単に受けられますので、ご心配の方は近くの医院で検査を受けられるとよいと思います。