現在日本で慢性腎不全により維持透析療法を受けている患者さんの数は実に二十五万七千人余りに及んでいます(二〇〇五年末)。沖縄県では三千六百人余りで、県人口を百三十万とすると、実に三百六十人に一人の方が透析を受けていることになります。また昨年新たに透析導入となった患者さんは全国で三万六千人余り、不幸にして亡くなられた患者さんもいらっしゃいますので、実質毎年一万人ほど増加しております。
さて、透析にいたる原因としては糖尿病、糸球体腎炎、高血圧などいくつか挙げられておりますが、最近これらによって生じる透析予備軍の状態を“慢性腎臓病”と定義して、早い段階から治療していこうという取り組みが始まってます。
具体的には血液・尿検査により評価した腎臓の働きが正常の六割以下の方や尿検査でなどの異常のある方など蛋白が当てはまります。このような状態でも大半の方は自覚症状に乏しく、あったとしても多少血圧が高いとか、むくみを感じる程度です。一〜二年といった短期間に状態が悪くなることは少ないのですが、十〜二十年といった長期間で見てみると、腎不全の症状(呼吸困難、強い吐き気などによる食欲低下など)が出現し維持透析療法を導入される率が高くなっています。
それ以外にも心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化による病気を合併する割合も高くなっていることが知られております。
さて、治療としては残念ながら特効薬はありません。血圧を徹底的に下げることや、食事指導、肥満の是正、禁煙指導、糖尿病や高脂血症の治療などで長期的な管理が中心となります(場合によっては入院によって精密検査を行うこともあります)。血圧目標については、慢性腎臓病を伴わない患者さんでは一四〇/九〇(単位はミリ水銀柱)としますが、慢性腎臓病の方は一三〇/八〇(同)以下とします。外来でよく「私の血圧は低すぎる。薬が強すぎるんじゃないの?と周りから言われる」と相談を受けますが、慢性腎臓病の危険性を説明して納得していただいています。
このような治療の専門としては、やはり内科医、特に腎臓内科医が中心となります。検診などで蛋白尿を指摘されたことのある方、腎臓の数値の異常を指摘されたことのある方、今は特に具合の悪いところがないからと思ってほったらかしにしていませんか? 気になるようでしたらぜひ病院・診療所に足を運んで、治療の必要性を相談されてください。