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いぼ痔の新治療(2006年12月06日掲載)

川上浩司・中頭病院

注射療法の選択肢も

三人に一人は「痔主」なんていわれるほど痔はポピュラーな病気です。でも命にかかわらない、人に話すのが恥ずかしい、手術は痛い、などの理由で放置されたり、誤った治療を受けて症状をひどくしたりする人もいらっしゃるかと思います。

ひと口に痔といっても大きく三種類に分類できます。痔核(いぼ痔)、痔ろう(あな痔)、裂肛(切れ痔)です。今回は最も罹患頻度の高い痔核の病態、予防、治療についてお話します。

肛門の周囲には網の目状に静脈が張り巡らされています(痔静脈)。この静脈が何らかの原因で拡張(静脈瘤)したものが痔核の本体と考えられています。腫れた静脈より出血したり、血管内に血栓を作って腫れたり、腫れた静脈瘤が排便時などに飛び出したりといった症状が起こってきます。

原因としては人類の直立歩行に伴った痔静脈の圧の上昇、排便時のいきみ、痔静脈を支える組織の加齢変化や遺伝による脆弱性、飲酒、刺激物による肛門周囲のむくみ、妊娠などです。

予防として肛門の清潔保持、規則正しい排便習慣、適度な飲酒、長時間の座位は避けるといったことがあります。

それでも症状のあるいぼ痔は専門医を受診してください。まず軟こう、座剤、緩下剤といった保存的治療で軽快する方も多く、それでも改善の見られない方、以前は手術療法の適応と考えられていた患者さんでも現在では患者さんの負担=痛みの少ない注射療法の選択肢もあり、県内でも数カ所でこの治療を受けることが可能です。

これは硫酸アンモニウムカリュウムとタンニン酸という成分の合剤を痔核に注入することにより、痔核に緩やかな炎症を起こし硬化、縮小させる方法で、現在痔核治療のトピックとなっており、全国的にも広がりを見せている方法です。

ただ治療の適応は専門医により厳正に決定されなくてはならず、痔核のすべてが注射療法の適応となるわけではありません。

とはいっても注射療法と手術療法を組み合わせるといった選択肢も存在し、術後の疼痛軽減に大きく役立っております。

いぼ痔は非常に多くの方が悩んでいる病気であり、決して自分だけの恥ずかしい病気ではありません。気になる症状があればお気軽に専門医にご相談ください。