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インフルエンザ(2006年11月22日掲載)

中村健・あけみおの里

予防接種は12月上旬までに

インフルエンザ(フルー)流行の季節が近づいて来ました。通常は一月下旬から二月上旬に流行のピークを迎えます。フルーにかからないようにするのが上策です。方法はフルーワクチンを適切な時期に毎年接種することです。面倒だ、もっと良い方法はないのか。残念ながらありません。

麻疹(はしか)、ポリオ、天然痘のように人だけがかかる感染症は対策が立てやすいのですが、フルーの場合は事情が異なります。日本で年間五千人以上の罹患者が出たポリオは一九六〇年からの一斉投与で短期間のうちに根絶し、世界中から例をみない大成功として称賛を受けました。フルーではこのようにはなりません。

フルーウイルスは人を含めた哺乳動物が地球上に出現する、もっと以前から存在していたようです。哺乳動物が存在しない一億年以上前に、すでに鳥類にかかっていたと考えられます。人だけを予防してもポリオ、麻疹(先進国では日本だけ根絶に不成功)のようにフルーウイルスを地球上から根絶することはできません。人以外の哺乳動物、鳥類までフルー感染を予防するのは非現実的です。フルーウイルスと共存しながらの対策となります。

その上、フルーウイルスには、ワクチンを製造する上で困った性質があります。それはウイルスの変異です。毎年「変装」して現れます。かりゆし姿に対応したワクチンを製造しても、アロハ姿に変装して現れると、フルーワクチンの効果は低下するか、効かなくなります。そのために、ワクチン製造の司令塔では国際的に情報を交換して対策を練っています。

フルーウイルスのファッションが変わるので、毎年ワクチンの中身を変えて製造しています。毎年ワクチンを接種しなければならない理由です。

もう一つの理由は、現行のフルーワクチンが発病を抑えたり軽く済ませたりできる有効期限が不活化(ウイルスを殺す)ワクチンであるため短いことです。従って、毎年接種しなければなりません。しかも免疫効果が出現し減少する時期を考えて、フルー流行前に接種します。

通常、一回接種法なら十一月下旬から十二月上旬を目安にします。リコンビナント(変装に対応できる)の生ワクチンが開発されると、一回経鼻接種で何年間も有効という時代が来るでしょう。マスクの使用、手洗い、部屋の加湿、過労の防止ももちろん大切です。