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飲酒ギドラ(2006年11月15日掲載)

北部福祉保健所・糸数公

肝障害・依存症など要因潜む

沖縄は酒に寛容な社会であると言われる。これから年末を迎え忘年会などで楽しい酒を飲む機会も増えるが、その一方で飲酒が健康に悪い影響を及ぼすことも忘れないようにしよう。

酒に含まれるアルコールは、脳、胃、肝臓、膵臓、大腸などの臓器に作用しさまざまな病気をもたらす。また依存性があるためアルコール依存症という病気にもつながるほか、最近社会問題化している飲酒運転など、関連する事件や事故も多い。

それぞれの問題にそれぞれの専門家が対応しているが、アルコール関連問題の全体像をイメージするために「飲酒ギドラ」という怪獣を使って説明したい。怪獣のモデルはゴジラシリーズに登場していたキングギドラで、三つの頭と大きな羽を持つという特徴がある。

飲酒に伴う第一の問題は、飲みすぎによりおこる身体面での健康障害で、いろいろな臓器に障害が生じる。大量のアルコールが胃粘膜を傷つけたり、アルコールの大部分を処理する肝臓に障害を来す。また毎日飲んでいる人は血圧が上昇し、血液を固まりにくくする作用が働いているため、飲酒量が増えるにつれて出血性の脳卒中の発症率が段階的に高くなることが分かっている(厚生労働省研究班「多目的コホート研究」より)。適正飲酒を守り、定期的に健康診断を受けて臓器の状態を把握することが肝要だ。

二番目の問題はアルコール依存症で、飲んでいる本人だけではなくその家族に影響を及ぼす。寝酒のように「寝るために酒を飲む」というつもりが、いつのまにか「酒がないと眠れない」状態に陥り酒量も増加していく。アルコール依存症は、家族や職場に迷惑をかけることが分かっていても、飲酒をやめることができなくなる病気である。習慣飲酒から依存飲酒に進行させないためにも週に二日は意識的に休肝日を設けることが大切だ。

そして三番目の問題は、飲酒に関連する事故や傷害事件、アルコールハラスメント(飲酒にまつわる人権侵害)などが挙げられる。社会や一般市民に影響を及ぼし、必ずしも飲酒期間が長くなくとも発生する。未成年の飲酒、一気飲みなども原因となることが多い。これに対してはギドラの羽の部分にあたる飲酒関連業界も含めて、社会全体で取り組む必要がある。

酒を飲むのなら飲酒ギドラが潜んでいることも忘れないで飲みましょう。はじめに酒には寛容な社会と書いたが、酒で失敗した人に対しては結構シビアな社会だから。