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顔の色素斑(2006年11月01日掲載)

半仁田優子・琉球大学医学部附属病院

シミに見える皮膚がんも

「最近、顔のシミが目立ってきたのですが、皮膚がんでしょうか?」と気にして受診される方がいらっしゃいます。大半は五十歳以降に見られる老人性色素斑、あるいは三十歳前後から始まる肝斑で心配ありません。

シミとは周囲の皮膚よりメラニンが多量にあるため生じる色素斑で、原因は自然老化、光老化、遺伝、ホルモン、炎症などが関与していると考えられています。最近では、シミに対して美白剤、レーザー療法、ケミカルピーリング、インテンス・パルスト・ライトなどが盛んに行われるようになってきました。

一方、高齢者の診察では、顔に見られる色素斑の中に皮膚がんが見つかることがあります。実は、シミに見える皮膚腫瘍(皮膚がん)を診断するのは、皮膚科専門医でも難しいことがあります。

顔にできる皮膚がんの中で最も多く見られるのは基底細胞がんです。顔の真ん中(鼻の周囲など)にできることが多く、日本人の基底細胞がんの85%は見た目が黒いです。はじめは径一、二ミリのやや盛り上がった状態で、黒子に似ています。基底細胞がんはほとんど転移しないので、完ぺきに切除できれば完治します。また、若いころから過度の日焼けをしないことや、遮光に努めることが皮膚がんの予防になると考えられています。

その他、高齢者の顔にできる色素性病変に悪性黒子があります。はじめは老人性色素斑に似ていますが、長い年月をかけて徐々に褐色、黒色の色むらが出現し、周囲の皮膚に不規則に広がり、その一部が盛り上がり悪性黒子型黒色腫(悪性黒色腫の一型)になります。

現在、これらの色素性病変に対しデルマトスコープによる所見が検討されています。デルマトスコープは病巣表面を十倍に拡大して観察でき、患者さんの痛みを伴わずに短時間で検査できる診断機器です。色素性腫瘍がメラノサイト系(悪性黒色腫など)か非メラノサイト系(基底細胞がんなど)かの鑑別に役立つことがあります。

シミが気になる方、特に以前からあった色素斑が濃くなっている、大きくなっている、シミの形が不規則になっている、一部が盛り上がってきた、シミから出血しているなどの症状を認める場合は、お近くの皮膚科で相談されるとよいでしょう。また皮膚がんは小さいと切除する範囲が小さくてすみ、局所麻酔で治療できます。特に顔の場合は手術後の変形が少ない方がよいので、早期発見、早期治療が求められます。