沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2006年掲載分 > 高齢者の健康維持

高齢者の健康維持(2006年10月25日掲載)

湧田森明・わくさん内科

筋力をつけて老化予防

人間は何歳まで生きていけるのでしょうか。百歳ごろまでともいわれているし、百十-百二十歳までは大丈夫ともいわれています。

事実、ギネス・レコードに見る世界最高齢はフランスの女性で百二十二歳、まだ記憶に新しい鹿児島県出身の泉重千代さんは百二十歳で他界されています。

長寿世界一のフランス女性はフェンシングを八十五歳から始め、百歳まで自転車に乗っていたようで、また泉さんも百一歳で目、耳ともに達者、胃腸もすこぶる順調だったとのことです。「健康で長寿」は、私たちがあこがれ、目指す医療の最終目標です。

現代社会は少子化が進み、かつ最近の新聞記事に「死亡者数が出生者数を上回った」と記されていました。少子化対策も重要ですが、健康で元気なお年寄りを一年でも長く楽しませ、幸せに暮らせる社会をつくることも重要です。

では、高齢者の健康を維持し老化を予防するためにはどうすればいいのでしょうか。基本的には病気にならないための努力をすること、特に大事なことは、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病にならないためのライフスタイルを小児のころから家族ぐるみで考えることです。

次いでワクチンなどによる感染予防、検診による早期発見、早期治療で手遅れにならないうちに病を取り除くこと、さらには老化を予防するための筋力低下を防ぐことも大変重要です。

私は老化の始まりは全身の筋力の衰えと考えています。頭の先から足の先までの筋力の低下が行動範囲を狭め、生活能力を脅かし、生きる希望もなえさせ、ついには寝たきりの不健康な生活を余儀なくさせてしまいます。

エベレストをスキーで滑降したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんが「エベレストの頂上に行く!」と、その目標を決めたのは六十五歳だったとのことです。六十五歳から両足首に重りを付け、背中にずっしりの荷物を背負いトレーニングを開始し、五年後に目標を達成しています。筋力はどの年齢でも訓練次第で増強するといいます。

人間は生まれた時は寝たきり、四つんばいから二足歩行、高齢になると三足歩行(つえをプラス)からまた寝たきりに戻ります。人間の一番楽な姿勢が胎児の状態です。身体は常に胎児の姿勢に戻ろうとしています。そうさせてはいけません。「毎日コツコツと無理せず、全身の筋力をバランス良くトレーニングし続ける」。これが老化予防につながります。

一人一人が生きる目標をしっかり持ち、自分の健康は自分で守ると自覚し、病を予防し、病から身を守り、筋力トレーニングで老化予防に励み、私も含め「皆さん元気な高齢者になりましょう!」