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糖尿病と早い老化(2006年8月23日掲載)

砂川博司・すながわ内科クリニック

健康は自分の努力と意思で

年を取るにつれ、人にはさまざまな老化現象が現れます。頭には白髪が増え、肌にはしわが現れ、体力も衰えてきます。これら目に見える老化以外に、目に見えない老化もあります。それは体の内部に起こる老化で、その一つに動脈硬化があります。心筋梗塞はその典型例として知られていますが、心臓を養う冠動脈がつまる動脈硬化の最終像であり、死に直結する最も重大な老化といえるでしょう。

さて、糖尿病は体内老化のスピードを著しく早める病気として知られています。糖尿病患者さんの多くは心筋梗塞を一度起こした人と同じくらい動脈硬化が進んでいるというデータもあります。

私が以前勤務していた県立中部病院には心筋梗塞の患者さんが年間七十〜八十人、昼夜を問わず救急搬送されてきました。

一九九七年から二〇〇四年に心筋梗塞で緊急処置を受けた六十歳未満の百二十人(男性百六人、女性十四人)について調査した結果、糖尿病四十五人、糖尿病予備軍(境界型)が二十人おり、両者をあわせると六十五人(約54%)、百二十人の心筋梗塞患者の実に二人に一人が糖尿病または境界型であることが分かりました。心筋梗塞を発症する危険性は境界型の早い段階からあり、その点では糖尿病に軽い、重いはないのです。

次に、百二十人の患者さんを糖尿病グループ(四十五人)と非糖尿病グループ(七十五人、うち境界型二十人)とに分けて比較したところ、どちらのグループも平均四十九歳という働き盛りに発症しており、ほぼ全員が肥満、喫煙率も70%と高い値でした。さらに、過去二十五年間で発症年齢のピークが約十歳若くなっているという衝撃的な事実も分かりました。

沖縄県の男性の平均寿命が全国二十六位になった要因として、こうした動脈硬化の最終像である心筋梗塞や脳卒中の増大もあげられるでしょう。早期の動脈硬化(早い老化)が沖縄の長寿神話をゆるがしているのです。

早い老化を予防するにはどうしたらいいでしょうか。言い古されていることですが、やはり食べすぎず、飲みすぎず、適度に運動して、太らない。タバコを絶対吸わない。ストレス解消の方法を見つける。さらにこれらが習慣化するまで実行する、等々に集約されるでしょう。

最後に江戸時代に書かれた貝原益軒の「養生訓」より「短命は生まれつきではない。十人のうち九人までは、自らの不養生でからだを害している。長生きの術を行おうという意思を持ちさえすれば、長生きすることは十分に可能である。『人の命は我にあり、天にあらず』人間の力でどうにでもなるのである」。

我々もいつかはこの世を去っていきますが、働き盛りの病気(早い老化)は避けたいものです。『人の命は我にあり、天にあらず』やはり長生きは我々の努力、生活習慣の改善にかかっているようです。