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尿失禁(2006年8月16日掲載)

山城豊・ゆたか泌尿器科

治療でコントロール可能

旧盆も過ぎ夏休みも残り少なくなりましたが、家族旅行や各種イベントに参加し夏を満喫できたでしょうか。筆者は今春泌尿器科を開業した関係で夏休みとは無縁の生活を過ごしています。

開業して驚いたことは、頻尿や尿失禁の悩みで受診する患者の割合が公立病院に勤務していたころに比べ、格段に多いことでした。しかも患者さんの年齢分布から尿失禁が決してお年寄りだけの病気ではないことを強く感じました。そこで尿失禁について述べたいと思います。

尿失禁とは「その人の意に反して、おしっこをしようと思わないときに尿が漏れてしまう状態」で、さまざまなタイプがありますが、代表的な二つのタイプについて説明します。

腹圧性尿失禁とは、咳やくしゃみ、重い物を持ち上げる、ジョギングなどおなかに力が入ったときに思わず漏れてしまうタイプの尿失禁で、女性に多く認められます。その原因として、女性は尿道が短く漏れやすい構造になっていること、お産や手術により骨盤の底にある筋肉が緩むことが挙げられます。

治療は、軽症では骨盤底筋を強化する訓練(骨盤底筋体操)や尿道の筋肉の緊張を高める作用を持つ薬が有効です。重症では手術が必要で尿道をつり上げる手術により約九割の尿失禁が治ります。

切迫性尿失禁とは、おしっこをしたいと思ったらすぐにトイレに行かないと間に合わず漏れてしまうタイプの尿失禁で、頻尿を伴います。その原因としては、ぼうこうの収縮反射活動が過敏になるために、尿が少しぼうこうにたまっただけで異常収縮するためで、脳や脊髄の病気や、前立腺肥大症、ぼうこう炎などでよく認められます。

治療はまず、排尿をできるだけ我慢し、排尿間隔を延長してぼうこう容量を増やす「ぼうこう訓練」や骨盤底筋の収縮力を高める「骨盤底筋体操」などの行動療法を行います。

行動療法だけでは、効果が出るまでに多少時間がかかるために、ぼうこうの異常収縮を抑える薬(抗コリン剤)を併せて用います。最近では電気刺激療法の一種である干渉低周波治療の有効性が報告されています。

尿失禁は、性別、年齢を問わず誰にでも起こり得る症状です。最近の治療法の進歩により尿失禁はかなりコントロール可能となっておりますので、尿失禁でお困りの方は最寄りの泌尿器科へご相談ください。