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切らない治療(2006年8月02日掲載)

宜保昌樹・琉球大学医学部附属病院

患者の負担抑え高い治療効果

医療を分類するときに大きく分けて内科系、外科系という言い方をすることがあります。治療法もそれに準じて内科的治療と外科的治療と分けて言ってもいいでしょう。私の専門は放射線科という領域ですが、その中にインターベンショナル・ラジオロジーという聞きなれない第三の治療法を担当している分野があります。 英語でのつづりは「Interventional Radiology」となります。

血管あるいは胆管など「-管」が付く体の部分を通して治療をすることが多く、その際にエックス線透視(胃透視はご存じでしょう)、超音波検査(エコー)、CTなどの画像を通して病変に到達します。カテーテル治療とか血管内治療とか聞いたことがあるかもしれませんが、血管だけを扱うのでは無いという意味でそれよりもずっと広い概念になります。

ラジオロジー(放射線医学)といっても放射線科医だけではなく多様な診療科の先生が実施しています。インターベンショナル・ラジオロジー単独で治療が完遂されることもありますし、他の治療との併用を前提として行われることも多いです。題目ではわざと「切らない」としましたが、手術前に病変を小さくしておくとか、逆に肝臓の手術前に残す予定の正常の肝臓の体積をあらかじめ増やしておくといった手技もあります。その場合、外科と密接に協力しながらコトを進めます。少ない患者への負担(医学用語で侵襲といいます)で高い治療効果をという、非常に虫のいい狙いをもって考えられた治療です。専門家はまだ少なく手技の中には大変難易度の高いものもあります。仲間うちでは、患者への低侵襲は手技者にとっては高侵襲という真剣な冗談があるくらいです。

今後とも進歩していく分野であり、常に第三の治療選択肢として頭においておくべきものとなっています。状況によって第一の選択肢であったり、唯一の治療法であることもあります。今回は実際の話には触れられませんでしたが、これを読んでいる患者さんがいましたら主治医を通して相談していただくことになります。

どの治療法を選択するにせよ、大事なことは自分も治療に参加するという意識です。医者をしていて一番治療しにくい患者さんのタイプは、「さあ、お前は医者なんだから俺の病気を治せ」というタイプです。患者と医療人とが協力して病気と闘う姿勢が良い治療が行われる前提です。であるなら「俺の病気を治せ」ではいけない訳ですし、その対極の「俺が治してやる」でもいけないことになります。われわれは病気とよく闘えるドクターになろうと日々努力しています。患者さんも病気とよく闘える患者さんになってほしいと思っています。