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小児の難聴(2006年6月21掲載)

仲地耳鼻咽喉科・仲地紀之

大切な早期発見と治療

幼稚園、小中高校等の学校健診も終わり、子どもたちの聞こえに問題はありませんでしたか。小児期の聞こえのトラブルは、学習面、情緒面に影響を及ぼすことが多く、周りの人の日ごろからの観察が大事です。

聞こえの仕組みは、まず音が耳介、外耳道を通って鼓膜に届きます。鼓膜で拾われた音の振動の波は耳小骨を伝わり、その際増幅され内耳の蝸牛という部分に伝わります。ここで音の波が電気信号となり脳へと伝えられ人は、音として認識します。

この音の聞こえが悪いことを専門的に難聴といいます。難聴は、聞こえの神経である内耳の障害による感音難聴と、その神経まで音の波を伝える仕組みの障害による伝音難聴に分けられます。

代表的な疾患として感音難聴では先天性の難聴、突発性難聴、老化が原因の難聴があげられます。伝音難聴では、、中耳炎などがあり耳垢栓塞ます。

突然、難聴を発症した場合、小学校高学年以上の学童は聞こえにくいと訴えますが、小学校低学年以下の幼小児は自分から訴えることが極めてまれで、ほとんど訴えがないというのが子どもの難聴の特徴です。ですから音声言語を習得する時期に難聴を発見することはかなり難しいことですが、聞こえや行動が何か変だなと感じたら、なるべく早期に医療機関へ相談し言語習得の遅れを最小限にとどめなければなりません。

また言語を習得していても難聴を放置することにより学習時や友達とのコミュニケーションの場で情報から取り残され、将来への影響が問題となることも考えられます。

難聴の早期発見のために近年、新生児聴覚スクリーニングが導入され、生まれて数日で聴覚検査が行われています。出生時から両側の中等度以上の難聴のある新生児の割合は千人に一人くらいということが判明しています。また、中学三年生における難聴の割合は千人に二人程度と考えられています。

年齢が上がれば難聴の割合が増えることは、後から発症する難聴や進行する難聴もあることを示しており、乳幼児健診、学校健診などのスクリーニングが重要であるとともに、日常でもテレビや音楽を聴く音が大きくなった、呼びかけに反応がない、お話しする声が大きくなった、というようなことを身近に感じたら、早期に医療機関を受診し検査と適切な治療を受けることが大切だと考えます。

これは大人でも同じことで子どもに限ったことではありません。耳は情報の入り口の大切な器官の一つです。大事にしましょう。