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血圧の薬(2006年6月7掲載)

大屋祐輔・琉球大学医学部附属病院

自己判断で調整しないで

高血圧の患者さんの診療で、最も受けることの多い質問が、「一度、血圧の薬を飲み始めたら、止めることができないのですね?」というものです。答えは、イエスとも言えますしノーとも言えます。正確には、「血圧の薬が、身体に悪い影響を与えて、薬を止められなくなる」のではなく、「身体が薬を止めることができない状態になったので、薬が止められない」が答えです。したがって、薬が必要な状態なのに、無理をして薬を飲まないように頑張るのは、望ましいことではありません。

血圧は一般には年齢とともに上昇します。肥満、運動不足、塩分の多い食事、また、ストレス、アルコール、睡眠不足でも上昇することが知られています。例えば、多忙な時期に、ストレスなどで一時的に血圧が高くなっただけの状態では、もちろん、血圧の薬を飲む必要はありません。しばらくすると、血圧は下がることが多いからです。

私たち医師は、患者さんの血圧がいつも高いのか、一時的に高いだけかを数回の診察の機会を利用して検討し、その結果、血圧の高い状態が今後も続くと考えたときに、「血圧の薬を飲みましょう」とお話するわけです。したがって、そのような場合は、薬を飲み始めて一時的に血圧が下がったとしても、血圧の薬を止めたら血圧はまた上がってしまうので、薬は止められない、ということになります。

しかし、あきらめないでください。薬を止められる方法もあるのです。それは、薬を飲みながら、別の方法で血圧を下げることができたら、つまり高血圧を治してしまえば、血圧の薬は止められるのです。どうして治すか? というと、肥満のある方では、体重を落としてスリムになることがもっとも可能性のある取り組みとされています。他には、塩分を徹底して控えること(一日六グラム未満)や、アルコールを控えることなどが有効とされています。しかし、一度血圧の状態が改善し、血圧の薬を止めることができたとしても、体重やその他の生活習慣が戻ってしまうと、また血圧が上がって薬の再開が必要になりますので、十分注意が必要です。

もう一つ、注意が必要なことは、自己判断で薬を調節しないことです。最近は、家庭血圧計が普及して、その血圧値を見て、自己判断で薬を調節される患者さんがときにおられます。最近の血圧の薬は、効果の持続時間が長いため、薬が効き過ぎかどうかの判断は非常に難しいです。したがって、薬の効き過ぎや効果不足と感じられたときは、測定した血圧値を記録して、ぜひ主治医の先生に見せてください。このほかにも血圧の薬の疑問は、気軽に主治医の先生や薬剤師の先生に相談してください。