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新生児の黄疸(2006年5月24掲載)

吉田朝秀・琉球大学医学部付属病院

体重の推移と白い便に注意

黄疸とは、血液中のビリルビン色素の増加によって目の白いところや、皮膚が黄色に染まる現象です。

黄疸の原因は数多くありますが、生後一、二カ月までにみられる乳児の黄疸のほとんどは生理的であり、程度の軽い黄疸や、母乳性の黄疸であれば特別な治療は必要ありません。しかし、体の黄色い赤ちゃんの中には緊急性のある病気が潜んでいることもあるので注意が必要です。

まず、生後二十四時間以内に強い黄疸が現れる場合は早発黄疸と呼ばれ、放置すると核黄疸の原因になるため治療を急ぐ必要があります。核黄疸とは、ビリルビン色素が大脳の基底核と呼ばれる場所に沈着し、はじめに傾眠、哺乳力低下、後弓反張(強くのけぞった姿勢)、反射の異常といった症状をひき起こし、その後難聴、脳性麻痺、その他の感覚神経の欠損や精神発達遅延などをきたす病気です。

原因はさまざまですが、多くは母親と赤ちゃんの血液型が異なるために強い溶血現象がおき、ビリルビンが増加する事によります。このタイプの黄疸は、光線療法や水分補充等の通常の治療では追いつかず、色素を除去するために体内の血液を交換する処置が必要なこともあります。

現在、多くの産院や産科では、迅速にビリルビンを測定する事が可能になっており、重症の早発黄疸を早期に発見し治療することが可能になっているため、幸いにも核黄疸の発症はほとんど見られなくなっています。

赤ちゃんの体に害のない黄疸は、生後一カ月を超えるころまでに自然に目立たなくなります。しかし、中にはいつまでも黄疸が持続し、遷延性黄疸と呼ばれる場合があります。母乳性や、出生時にできた頭血腫からの二次的な色素産生が原因で、無害であることが多いのですが、十分な体重の増加がなかったり、色の薄い (白い)便が見られたりした場合にはビリルビンの体内での処理や便への排泄がうまくいっていない事が考えられます。実は、この遷延性黄疸は原因を調べるのがとても難しく、さまざまな検査を行ってもはっきりしないことがあります。もしも胆道と呼ばれるビリルビン排泄部位の閉塞や拡張があった場合、生後二カ月以内に胆道を開通させる手術を行うことがその後の回復に望ましいため、時間に余裕がない場合は、小児外科の先生に相談して、試験的にお腹を切開して肝臓や胆道を直接観察してもらうこともあるほどです。

生後一カ月の乳児健診には黄色い赤ちゃんが大勢やってきます。ですから健診の医師が「白いウンチが出たことは無いですか?」と尋ねるのはとても大事なキーワードなのです。