かぜ症候群の病原体の約80%は抗生物質が効かないウイルスですが、残り約20%は、抗生物質が有効な細菌やマイコプラズマ、クラミジアなどの病原体によるものです。溶連菌(正式名称はA群β溶血性連鎖球菌)は、抗生物質がよく効く細菌の一種です。
溶連菌感染症は、幼児から小学生までの子どもにかかりやすく、また周りに伝染し、流行することもあります。溶連菌はのどの炎症をよく起こしますが、それ以外に首のリンパ節や皮膚、まれではありますが、筋肉や骨、関節などにも化膿性炎症をひき起こす厄介なばい菌です。
おもな症状は、(1)発熱、のどの強い発赤や痛み(2)唇の発赤や唇周囲が白っぽく見える(3)舌がイチゴのように赤くなり小さいぶつぶつ(イチゴ舌)が見られる(4)体や手足の赤い細かい発疹の出現-などがあります。
昔は猩紅熱と呼ばれ、亡くなることもある伝染病として恐れられていましたが、現在では抗生物質の投与で完治するようになったため、溶連菌咽頭炎(または扁桃炎)や溶連菌感染症と呼ばれようになりました。
溶連菌感染症の診断は症状だけでもつくことが多いのですが、症状が似ている川崎病と区別するために検査が必要な場合もあります。検査は外来で簡単にできて、のどを綿棒でぬぐうことで溶連菌の有無が十分以内に分かります。
治療は、経口のペニシリン系抗生剤がよく効き、たいてい服用後二日以内に解熱し咽頭痛も治まり食事も取れるようになります。ここまで回復すれば、登園や登校してもかまいません。しかし、症状が消失して十-二十日後に、まれながら心臓弁膜症の原因となるリウマチ熱やコーラ色のオシッコで発症する急性糸球体腎炎など入院治療を要する病気を発症することがあり注意が必要です。
リウマチ熱はペニシリン系抗生剤を十日間内服することにより予防できます(残念ながら急性糸球体腎炎に対する効果は証明されていません)。
一見元気になったお子さんに長期間服用させることは根気がいることですが、のどから溶連菌を完全に除去するためには決められた期間、飲み忘れがないように気を付けてください。溶連菌感染症はしばしば繰り返すため、普段からうがいや手洗いを行う習慣を身につけて、予防を心掛けましょう。