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腰部脊柱管狭窄症(2006年4月12日掲載)

屋良哲也・那覇市立病院

加齢的変化で50代以上多い

聞き慣れない病名ですが、昨年の紅白歌合戦の司会を務めたみのもんたさんが、この病気にかかり手術を受けたといえばお分かりになる方も多いのではないでしょうか。すでにこの病名を告げられていた方は、みのさんの活躍している姿を見て少し安心されていることでしょう。

腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の神経の通り道(脊柱管)が腰のあたりで狭くなり神経が圧迫されてしまう病気です。親指ほどの太さの脊柱管は、骨が張り出したり、軟骨が突き出したりすることによって狭窄が生じます。脊柱管の狭窄によって神経は圧迫され、ちょうど砂時計の形のようにくびれてしまいます。

主な症状は大腿からふくらはぎにかけての痛み・しびれ感で、歩きだしてしばらくすると症状が現れ、徐々に強くなり、歩きづらくなります。しかし、前かがみで少し休めば、しびれや痛みはなくなり、再び歩けるようになります。最初は数百メートルの歩行で症状が出現しますが、そのうちに室内の移動すらもつらくなることがあります。さらに神経の圧迫が進行すると、痛み・しびれ感だけではなく足の力が入らない(下肢麻痺)、の部分がしびれておしっこが分からない(膀胱障害)、便意が鈍くなり長く便秘が続くなどの症状(直腸障害)も出てきます。夜中に足の痛みがひどく睡眠が妨げられることもあります。また、軽度の腰痛を伴うことがありますが、全く無いこともあります。

診断は症状を聞いて診察をし、エックス線で背骨の状態をみればだいたい可能ですが、MRI(磁気共鳴診断装置)検査まで行って脊柱管と神経の状態をみれば確実になります。治療は薬によるものが中心で、神経血流改善薬、消炎鎮痛剤、ビタミン剤などを使用します。また、温熱・電気治療、神経ブロック注射を行うこともあります。これらの治療が無効でしかも重症な場合は手術を考えなくてはいけません。手術は神経を圧迫している骨などを切除する一-二時間のものが一般的で、七-十日間の入院が必要となります。

この病気は脊椎の加齢的変化が原因であるため五十歳以上の方に多く発症します。従って、歩きづらくなると、年のせいで筋力が衰えたためだろうとか、運動不足によるものと考えられがちです。患者さんの中には我慢しているうちに下肢麻痺、膀胱・直腸障害が出現し、驚いて受診される方もおられます。腰部脊柱管狭窄症は治療によって改善しやすい病気ですので、早めに専門医を受診されてください。