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大腸がん(2006年4月5日掲載)

大嶺靖・沖縄赤十字病院

早めの検診で退治する

わが国における大腸がん死亡数(二〇〇二年)は約三万七千人で、半世紀で十倍に増えています。食生活の欧米化が大腸がん増加の大きな要因と言われています。ここ沖縄県でも全国平均とほぼ同等の死亡率が示されています。

さて、万が一大腸がんにかかった場合には何らかの治療が必要になります。主な治療法に手術治療があります。数年前に「きずの小さな手術」が脚光を浴びて登場してきました。手術創が小さいため、美容的に優れ、痛みも軽く、患者さんにとって負担の少ない治療とされています。術後の成績(合併症や生存率等)も従来の開腹手術に劣らないとの報告があり、全国的に広まっています。しかし手技の習熟に時間がかかるなどの問題点もあります。消化器外科関連の学会では、その部門の会場は立ち見が出るほどの盛況となっています。

「きずの小さな手術」には鏡下手術と経肛門的内視腹腔鏡下手術があります。大腸がんを切除することに関して、腹腔鏡下手術と従来の開腹手術に大きな違いはありません。病変のある腸管を切除し、残りの腸管をつなぎ直したり、病変が肛門に近い場合には人工肛門をつくったりします。腹腔鏡下手術ではそれを小さな手術創で行います。前述の利点に加え、術後、腸閉塞の発生も少ないと言われています。手術創が小さく目立たなければ、ゴルフ場や温泉のおふろもあまり人目を気にしないで入ることができると思います。

経肛門的内視鏡下手術(きずのない手術です)は特別な器械を用いて行います。肛門からカメラや鉗子等の器具を挿入し、腸管の内側から病変を一括切除します。おなかにきずもつかず、術後の痛みもほとんどありません。この手術によって大きな手術や精神的、肉体的負担になる人工肛門を回避できる可能性があります。ただ、粘膜に限局する早期がんや良性腫瘍のみがこの手術の適応となっています。

大腸がんの進行度を病期(0-VI期)で表します。VI期が最も進んだ状態ということになります。五年生存率で見るとI期は90%、II期は80%、 III期は56-70%、VI期は13%ぐらいだと言われています。大腸がんを早期に発見すれば高い確率で治すことができます。

大腸がんにかからないよう食生活に気をつける(動物性脂肪やアルコールの取り過ぎに注意する)ことがもちろん大事です。しかし長生きをすると、大腸がんという敵に襲われる危険性が高くなります。腹痛、下血等の症状が出現する前に、検診で早めに敵を見つけて敵の力が弱いうちに退治をする。これが戦いに克つ秘訣です。