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咳と喘息(2006年3月29日掲載)

知念清治(県立北部病院)

異常なくても通院が必要

沖縄の方言で「しーらさっくぃー」というのがあります。これは「長引いて苦しい、きつい咳」ということです。喘息患者のお年寄りからよく「しーらさっくぃーしてから喘息になったさー」と聞かされることがあります。日本呼吸器学会は昨年、「咳に関するガイドライン」を策定しましたが、そのなかで「慢性の咳で喘息になることがある」としています。まさにこの「しーらさっくぃー」が喘息になる咳ではないかと思われます。咳にもいろいろありますが、どのような咳が喘息になるでしょうか?

三週間以上長引く咳で、痰がなく、病院に行って胸のエックス線写真を撮っても異常がなく、診察(聴診)でも異常がない咳が要注意です。このような咳には、咳喘息、アトピー咳、かぜ感染後に長引く咳があります。そのうち喘息になる咳は咳喘息とかぜ感染後の咳です。

咳喘息は喘息であるが喘息に特有な、のどがぜいぜいする「喘鳴」や呼吸困難は伴わず、気道が過敏になっている状態です。アトピー咳は咳に対する感受性が亢進しており少しの気道刺激(クーラーの冷気、暖気、会話、運動、受動喫煙、香水など)で咳しやすい状態で、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患を持っている人にかかりやすい。かぜ感染後の咳は発熱や鼻水、のどの痛みがおさまっても咳だけが続く状態です。特に百日咳やマイコプラズマ感染後に多いとされています。

日本呼吸器学会の報告では、日本では慢性の咳は咳喘息やアトピー咳が多いとされ、その中で咳喘息の三割が喘息に移行するとしています。

しかし私の経験では大人になって初めて喘息になるのは、かぜ感染後に咳が長引いた後に起こるのが大半です。感染後に非特異的なアレルギー性の炎症が残り、気道過敏性が亢進しているとの報告があり、それをほっておくと気管支喘息になるのではと思われます。

いずれにしても、痰のでない乾いた咳が三週間以上続き、病院に行ってエックス線写真や診察で異常がないといわれる咳は要注意で、ほっておくと喘息になる可能性があります。異常がないといわれても咳が治るまではしっかりと通院しましょう。長引くようなら呼吸器専門医に診てもらいましょう。